新型コロナウイルスの感染拡大防止へ、Jリーグから異例の“お願い”だ。臨時の実行委員会を25日に実施し、4月3日のリーグ戦再開を見送り、J1は5月9日、J2は5月2日、J3は4月25日の再開を目指すことで合意した。ウェブ上で会見した村井満チェアマン(60)は5つの合意事項を表明。その中には、感染拡大のリスク削減を図り「約2カ月間のアウェー観戦の自粛」を盛り込んだ。

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「再開」と「安全」を両立させるには、再延期はやむを得なかった。村井チェアマンは4月3日の再開断念の理由に「お客様を守るための装備の準備」を挙げた。マスク7万枚と消毒液300リットルは確保できたが、体温を測るサーモメーターは必要数の約450個そろうのが同18日。J3、J2、ゴールデンウイーク後にJ1と日程に余裕を持たせながら3段階で再開し、感染防止策の成熟度を深めていく方針をとる。

合意事項には苦渋の思いで“お願い”も盛り込んだ。リーグ戦はホームアンドアウェー方式。全国にクラブがちらばり、試合のために長距離移動をするのは選手だけではない。敵地での声援は、選手の背中を力強く押す。そんなサポーターの力を十分承知した上で、村井チェアマンは政府が全国的な大規模イベント開催への慎重な対応を求めていることも踏まえ「(人が)全国各地から集まることが懸念されている。全国に(ウイルスを)持ち帰ることも想定される。再開後2カ月をめどに遠距離で観戦に来るアウェーのお客様に自粛をお願いすることを想定している」と長距離移動を伴うアウェー観戦の自粛を求める意向を示した。「長距離」の定義や近距離クラブ同士の対戦など、詳細は協議を重ねる。

スタジアム内でも密集状態をつくらないよう、指定席では前後左右を空けるなどして収容率50%以下を目指すことに。NPBとの「新型コロナウイルス対策連絡会議」で提言された、感染症のリスクを減らすために肩組みや大声での声援などの応援スタイルの変更も引き続き議論していく。

2月下旬からの中断で延期となったのは、合計314試合。延期となった五輪期間を含め、平日と週末に試合をどう組み込んでいくかの検討を進める。ルヴァン杯も大きな変更はなく再開できる見通し。「相当、難易度が高い意思決定だったと思う。個々の利害を超えて判断いただいたクラブの皆さまに感謝申し上げます」。サッカーのない日常に、ようやく光が差し込んできた。【浜本卓也】