日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズは5日、スペイン人女性ミラグロス・マルティネス監督(36)の退任を発表した。

19年の就任後、3シーズン目の指揮を執ってきた同監督は「この壮大な冒険をするうえで、この国以上の国は見つけることはできなかったと思います。ありがとう日本」と熱いメッセージを寄せた。

女性監督誕生のストーリーは、18年12月中旬から始まった。JFL昇格決定直後、クラブ幹部は「Google」に「サッカー 女性 監督」と打ち込んだ。

最終的には関係者の情報を基に、4人をリストアップ。その1人がマルティネス監督だった。吉田雅一社長は当時を思い返した。

「ミラ監督との出会いは奇跡に近いものでした。JFL昇格が決まって間もない、2018年12月21日に初めてメールでコンタクトを取り、ほぼ二つ返事で、異国の地で、男子チームを率いることにYESと答えてくれました」

19年1月14日、スーツケース1つで飛行機に飛び乗った同監督が中部国際空港に到着。Googleから始まった監督探しは「情熱的で挑戦心のある、真のプロフェッショナルな監督でした。その思いは今でも変わりません」(吉田社長)と新たな1ページを開いた。

今季は天皇杯1回戦(5月23日)でFC刈谷を2-1で退け、101回目の歴史ある大会で女性監督初勝利をつかんだ。2回戦はJ1神戸に挑戦。0-4で敗れたが、マルティネス監督は「この経験は多く味わえることじゃない」と今後の成長に期待を込めていた。

だが、JFLでは苦戦が続いた。第6節高知ユナイテッド戦(4月24日)を最後に白星から遠ざかり、以降は2分け6敗。17チーム中14位と低迷した。直近の第15節奈良クラブ戦(7月3日)前にクラブへ「次の試合で負けたら責任を取り、チームを去る」と伝えていた。同戦は0-3で敗れ、今後は小沢司コーチ兼テクニカルディレクターが暫定監督として指揮を執る。

退団発表でマルティネス監督は「孤独はこの経験において最も過酷なこと。その中でこの挑戦をここまで続けることができたのは、私を愛してくれたたくさんの支えがあったからです」と記した。吉田社長も「何とか浮上のきっかけをつかもうと、必死にいろんな策を尽くしてくれました。練習後には、事務所で相手チームを細かく分析しており、努力、諦めない姿勢、揺らぐことのない情熱は、いつまでも忘れることはありません」と感謝を込めた。

日本サッカー界に確かな爪痕を残し、愛された女性監督が鈴鹿を去る。【松本航】