無限の可能性を秘める高校年代屈指のボランチが、プロの舞台に飛び込む。J2FC町田ゼルビアは9日、U-18日本代表候補で青森山田MF宇野禅斗(3年)の来季加入内定を発表し、同日、青森市内の同校で入団会見を行った。今夏の全国高校総体優勝、プレミアリーグEASTで現在首位の原動力になっている「名門の心臓」は、数チームが獲得に動く中、同校出身56人目のJリーガーとして町田入り。24年パリ五輪出場を目指し、1年目から戦力になる覚悟だ。

<こんな人>

宇野の才能が開花したのは幼少期からの“負けず嫌い”が大きく影響する。小学1年でサッカーを始め、青森山田が全国選手権で勝ち進む姿をテレビで見て「山田が強くなっているのを知り、全国トップレベル、中高一貫で成長できると思い、県外で戦おうという気持ちでした」。小学校卒業後は青森山田中に迷わず進学。主にセンターバックでプレーしていた中学2年の冬ごろにボランチへ転向し、後の町田入団につながった。

中学から常に前を走る男がいた。同期の松木だ。全国中学校体育大会で3年時からメンバー入りした宇野に対し、1年時から試合出場。高校でも松木は1年時から主力で、1年遅れで追いついた。宇野はともに中学、高校を歩んできた戦友松木に「自分が6年間で満足した日は1日もなくて、常に彼に悔しい思いをしながらサッカーをしてきた。そういう意味では成長していく上で彼の存在は大きかったです」と感謝する。

黒田剛監督(51)は宇野について「素直で人の話をよく聞けて、負けん気が強く、松木というライバルがいて切磋琢磨(せっさたくま)してきた」と言う。「最初からすごく上手とか、プロを目指せるとかではないが、高校2年でレギュラーになり、本当に著しい成長を見せてくれた」。父賢一さん(55)は「中学入学前から『学年は関係ない。必ずやるんだ』と、いつも強がり、表面には出さないけど、負けず嫌いでした」と証言。町田でも変わらぬ“強気”な姿勢で、主力の座を虎視眈々(たんたん)と狙う。【山田愛斗】