22年シーズン限りで現役を引退した小林大悟氏(40)が、2日に都内で行われたフランス1部パリ・サンジェルマンの日本ツアー発表会見に出席した。現在は、4月から開校した「パリ・サンジェルマンアカデミーJAPAN」のテクニカルダイレクター(TD)を務める。受講生とともに、会見に出席したパトリック・エムボマ氏との集合写真に納まった。

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約20年ぶりの、エムボマとの再会だった。現役時代、03年、東京ヴェルディでチームメートとしてプレー。互いに年齢は重ねたが「変わってないなあ、と感じましたね」。若い選手にも優しかった、あの頃と同じ柔和な笑顔。会見後、握手をし、抱擁を交わした。

この再会も、不思議な縁だ。エムボマ氏はクラブOBとして、この日の会見に出席。小林氏も4月からアカデミーのTDに就任し、パリ・サンジェルマンに関わることになった。

TD就任のオファーは、開校よりかなり早い段階から受けていた。決めたのは3月。パリから現地アカデミーのTDが来日し、育成の考え方を聞いて共感したことが決め手だった。「教えるティーチングと、寄り添うコーチングの違いですとか」。

自身の幼少期の記憶は、まずこうやるという“答え”を聞いて、練習してきた。パリ・サンジェルマンのメソッドを通じて、欧州クラブはより各自の判断に任せながら指導することを実感した。練習メニューも発想力が豊かになるよう工夫され、声のかけ方も違った。「プレー選択にしても、1人1人が自信を持ってやれるようになる」。臨機応変な判断力は、森保一監督率いる日本代表に求められる要素でもある。

育成の考え方に触れて、まず「もし(自身が)小学校時代にこれを知っていたら、もっと違ったかもしれない」と感じた。だから、自身が子どもたちに伝えていこうと心に決めた。自身は日本の指導を受け、そのいい部分も理解している。「パリのやり方を今も勉強しながら、うまく日本に合わせていけるようにしている」。試行錯誤の繰り返しだというが、話す表情には充実感が漂う。

パリ・サンジェルマンのアカデミーはブラジルなど世界に20以上でき、各国のTDがオンラインで集まって情報交換などを行うという。毎年、全世界のアカデミーがパリに集結し、ナンバーワンを決める大会も行われている。日本校の参加は来年以降になる見通しだという。すでにバルセロナを通じてMF久保建英(レアル・ソシエダード)、レアル・マドリードを通じてMF中井卓大(Rマドリード・カスティージャ)など、下部組織を通じて欧州にプレーの場を移す前例はある。

日本のアカデミーは発足間もないが、すでにパリで評価を高めている選手もいるという。いずれ、日本からパリ・サンジェルマンの主力になるような選手を輩出する-。それが今の小林氏のミッションだ。【岡崎悠利】