経営不振に陥っている日産自動車が、J1の名門クラブ横浜F・マリノスの株式売却を検討していることが29日、分かった。日産はマリノス株の約75%を保有する親会社。関係者によると、IT大手など少なくとも3社以上と接触。関係の強い銀行など金融機関を通じて、売却を打診してきたという。
“身売り”話が加速したのは7月以降。日産が、イングランド・プレミアリーグのマンチェスターCなどを擁する英シティー・フットボール・グループとのグローバル・パートナーシップ契約を6月30日で終えてから、模索が本格化した。
日産は、日刊スポーツの取材に「弊社が発表した案件ではなく、臆測に基づく報道にはコメントしない」と回答したが、株式売却は避けられない情勢だ。25年3月期の決算が6708億円の赤字に転落し、国内外7工場と2万人の削減計画を示した中で、痛みの共有策としてクラブ運営からの撤退も視野に入れてきた。今後は買収条件などを見極めた上で、年内にも候補を絞り込みたい方針という。
横浜は72年に創部した日産のサッカー部が前身。93年Jリーグ元年の「オリジナル10」として日本代表選手を多く輩出した。リーグ優勝も5度を誇る一方、今季は開幕から低迷。最下位に落ちた6月に、クラブ史上初となるシーズン2度の監督解任を断行した。過去にJ2降格はない中、現在はJ1残留圏最後尾の17位に沈むことも、運営権を手放す方向に傾いた一因のようだ。
来年2月に更新を迎える本拠・日産スタジアムの命名権についても日産は、横浜市に現状の半額以下となる年5000万円の再契約を申し入れたが、成立可否が流動的になっている。かつては横浜フリューゲルスを吸収合併して救いつつ、日本サッカーの先頭を走ってきた伝統クラブと親会社に別れの日が迫っている。
<主なJクラブの経営権委譲>
◆東京ヴェルディ 99年に読売グループが経営を撤退。日本テレビが引き継いだが、09年に撤退。18年にアカツキが株式を取得して運営サポートをしている。
◆横浜フリューゲルス 親会社の佐藤工業と全日空が撤退し、98年に消滅。横浜マリノスと統合された。
◆湘南ベルマーレ 99年に親会社のフジタが撤退し、市民クラブとして再出発。ライザップが経営権に関わるパートナーとなった。
◆ヴィッセル神戸 川崎製鉄から04年に楽天が経営権を取得した。
◆FC町田ゼルビア 経営難からサイバーエージェントが18年に経営権を取得した。
◆鹿島アントラーズ 住友金属工業(現日本製鉄)が主たる株主だったが、19年にメルカリが大株主になり、クラブ運営に取り組む。
◆FC東京 東京ガスのサッカー部を前身とし、同社の影響は大きかったが、特定企業の影響を受けない方針で、多くの株主が出資する形で運営されてきたが、21年にMIXIが筆頭株主となった。
◆横浜F・マリノス 前身は1972年創部の日産自動車サッカー部。93年のJリーグ開幕時から「横浜マリノス」として参加。吸収合併した横浜フリューゲルスから「F」を取り、99年に現チーム名になった。95年にJ1初制覇。03、04年に2連覇し、19、22年にも優勝した。リーグ制覇5度は鹿島アントラーズの8度に次ぐ2位。鹿島とともに1度もJ2に降格したことがない。木村和司、井原正巳、川口能活、中沢佑二、中村俊輔ら代表の名選手を輩出。岡田武史ら名将も率いた。マリノスはスペイン語で「船乗り」。本拠地は横浜市の日産スタジアムとニッパツ三ツ沢球技場。



