1次リーグE組の日本(FIFAランキング24位)は27日、第2戦でコスタリカ(同31位)と対戦する。日本は23日のドイツ戦に歴史的な勝利を飾ったとはいえ、1次リーグ突破を確実にするため、勝利はもちろん、点差もつけたい。スペインに0-7と大敗したコスタリカにとっては絶対に負けられない戦いになる。2002-2003年の1シーズンをコスタリカリーグでプレーした有坂哲さん(47)が決戦を前にコスタリカ滞在中の触れ合いと思い出を語った。

福岡・糸島市でジュニアチームの指導に当たる有坂さんは、コスタリカ2部リーグでプレーする機会をくれた恩人への感謝を忘れない。きっかけを与えてくれたのは、90年W杯イタリア大会のコスタリカ代表DFのマウリシオ・モンテーロさん。「彼がチームに迎え入れてくれなかったら、コスタリカでプレーすることはできなかった」と話す。

26歳でコスタリカに渡ったが、最初の約8カ月間は所属チームがなかった。地元の草サッカーチームに交じっていたところ、2部リーグのサン・ラファエルで監督を務めていたマウリシオさんに出会った。

有坂さん 国内クラブでも活躍し、W杯にも出たことがある国民的英雄。日本で言えば、三浦知良選手みたいな人です。周りからとても慕われる存在でした。貯金も底をつき帰国を考えていたところ、チームでプレーしないかと声を掛けられた。プロ契約にこぎつけ、1シーズンプレーする道を作ってくれた。

コスタリカ滞在中には、その後の人生の指針となる言葉も教わった。スペイン語圏の同国であいさつなどの場面で日常的に使われる「Pura Vida(プラ・ビダ)」。「最高だ!」などと訳され、人生を純粋に楽しもうという気持ちが読み取れる。帰国後に指導者をしている有坂さんにとっても、その言葉から得た教訓は大きいという。

有坂さん 自分たちの環境の中でどれだけ楽しめるのかが、この言葉に表れている気がするんです。毎日『プラ・ビダ』と言っているうちに、自然と笑顔になる。マウリシオもきっとそんな環境で育ったから、他の人にも温かく接してくれたのかな。

生まれ故郷の日本と、20代後半の時に大きな経験を与えてくれたコスタリカ。有坂さんは「対戦することで複雑な気持ちもありますが、どんな試合を見せてくれるか楽しみでもあります」と、ゆかりの深い両国の大舞台での対戦を心待ちにした。【平山連】

◆有坂哲(ありさか・てつ) 1975(昭50)年5月24日、東京・練馬区生まれ。拓大中退。ブラジル留学を経て現役から離れ、母校・都立石神井高サッカー部のコーチに当たっていた。そこで指導者としての伸び悩みを感じ、「もう1度選手としてプレーすることで指導者としての引き出しを広げたい」と海外挑戦を決意。25歳でコスタリカに渡り、当時同国2部リーグに所属していた「サンラファエル」とプロ契約し、ボランチとして1シーズン(02~03年)プレー。帰国後の現在は福岡・糸島に移住し、地元クラブ「エリア伊都」で指導者を続けている。