【ヒューストン(米国)20日(日本時間21日)=岡崎悠利】日本の至宝が新たな歴史を刻んだ。スペイン1部のレアル・マドリードに移籍した日本代表FW久保建英(18)が国際親善大会、インターナショナル・チャンピオンズ杯の初戦、バイエルン・ミュンヘン戦で後半開始から出場した。レアルのトップチームで試合に出場した日本人は史上初。ジダン監督に起用され、加入後の初実戦でデビュー。チームは1-3で敗れたが、切れ味鋭いドリブルにスルーパスを披露した。次戦は23日(同24日)でアーセナルと対戦する。

全世界の選手が目指す、まさに夢の舞台に久保が立った。

「試合前は雰囲気を感じて、時間がたつにつれて、現実になってきたというか」

高揚、緊張-。Rマドリードのユニホームに袖を通した者だけが分かる、言いようのない感情が18歳を包んだ。その瞬間は後半開始とともに訪れた。日本サッカー界にも新時代を告げるように、背番号26の白いユニホームでゆっくりとピッチに歩を進めた。

「誇りを感じる」。そう表現したクラブのエンブレムを胸に、中盤に入った。後半開始からわずか15秒、いきなりドリブルでDF2人の間を抜けて左サイドを鮮やかに突破。スタンドをどよめかせた。「押し込めたときは積極的に仕掛けるように」。ジダン監督からの指示だった。7分には久保から、ゴール前の19歳FWビニシウスへキラーパス。惜しくも得点はならなかったが、未来のホットラインが初めて実戦でボールをつないだ。

39分には同い年で新加入の同期FWロドリゴの得点を“アシスト”。好位置での直接FKを得ると、キッカー付近の位置から主審のもとに寄っていって壁の位置を指摘。ロドリゴのシュートは後方へ下がった壁の右上を抜け、右上隅を射抜いた。何度も手をたたき、唯一の得点を喜んだ。

主力組が出場した前半からメンバーを総入れ替え。後半は久保を含めて3人が10代と、有望株たちがBミュンヘンに挑戦する形となった。ポーランド代表FWレバンドフスキらが出場した相手に突き放される展開の中で、世界最高峰の場を体感した。「もっとやらないといけないと思うけど、最低限だったかな」。自身に及第点を与えることに納得しきっていない表情に、頼もしさがあった。

トップチームに加わり約2週間。「当たり前のように速いし、当たり前のようにうまい。それで一喜一憂せずに、それを自分の当たり前にしていかないといけない。周りがなんと言おうと焦らずに、上がっていければいい」。騒がしさの中でも、地に足をつける。バルセロナの下部組織から帰国した約4年前から変わることのない久保がいた。

「日本を代表することができてうれしい。でも、前に進まなければいけません。まだ1試合。もっともっと出場したい」

Rマドリードのトップチームでプレーする-。日本サッカー界にとっての夢物語を1つ現実にした18歳の情熱が尽きることはない。