【ロンドン25日=春日洋平通信員】23日に閉幕した陸上の世界選手権(ベルリン)で、男子100メートル、200メートルを世界新で制し、400メートルリレーを含む3冠に輝いたウサイン・ボルト(23=ジャマイカ)が、走り幅跳びに挑戦する意向があることを明かした。24日、英BBC放送の電子版が報じた。「挑戦をコーチに提案した」と本人が明かし、12年ロンドン五輪で4種目に出場する可能性が高まった。陸上男子では36年ベルリン大会のジェシー・オーエンス、84年ロサンゼルス大会のカール・ルイス(ともに米国)以来、史上3人目の五輪4冠が現実味を帯びてきた。

 異次元の速さで驚異的な世界新記録を連発したボルトが、今度は「鳥人」へと進化を遂げる。BBC放送など英国メディアのインタビューに「走り幅跳びにも挑戦したい。コーチに提案した」と宣言。12年ロンドン五輪ではあの84年ロサンゼルス五輪のルイス以来28年ぶりの4冠に挑戦する可能性が出てきた。

 短距離の実力者が走り幅跳びでも成功できることは歴史が実証済み。オーエンス、ルイスと過去2人が五輪4冠を達成している。ボルトは2人を上回る196センチの長身。大きなストライドと100メートルで9秒58の世界新を出した際の平均時速37・8キロのスピードで踏み切れば、世界一も夢ではない。本人も「結果は出せると思う」と自信をのぞかせた。

 走り幅跳びで8メートル95の世界記録を持つマイク・パウエル氏(米国)も「彼の身長とスピードはほかの選手にとって脅威。突然変異ともいえるアスリート。その身体能力は驚異的で、ほかの選手が手の届かない場所にいる。彼には私を超える資質が備わっている」と太鼓判を押し、人類初の9メートルの壁を越えることも可能と予想した。

 走り幅跳びに挑戦する時期は明言していないが、3年後のロンドン五輪には十分間に合う。北京五輪では競泳8冠のフェルプス(米国)と大会の主役を二分したが、ロンドン五輪では史上3人目の偉業への挑戦で、世界中の視線を独り占めにしそうだ。