駒大は11日、第92回東京箱根間往復大学駅伝(来年1月2、3日)に向けた都内での練習を公開した。前回大会の5区山登りで大ブレーキとなった駒大の馬場翔大(4年)が、涙でリベンジを誓った。1度は走ることをやめようと考えた苦境から立ち直り、今大会は5区にこだわらず、8年ぶりの優勝で雪辱を果たす決意を表した。

 1年前の悪夢が頭をよぎると、馬場は思わず感極まった。「陸上をやめたかった。ここから立ち直れる気がしなかった。情けなくて、申し訳なくて。これから先どうしていけばいいのか分からなかった…。でもいろいろな方に支えられて、また箱根を走れる。恩返ししたい…」。大粒の涙が頬を伝った。

 15年1月2日。優勝候補筆頭として仲間から受け取ったタスキ。前年は区間3位と快走した箱根の山登りで区間17位と沈んだ。低体温症で体が動かず、意識も遠のいた。レース中、どう走ったか、どうゴールしたかも、いまだ記憶にない。東京に戻った1月上旬には電車内で中学生男子に「あの箱根の…」と指を指された。隣の車両に逃げ出すほど心が折れた。

 だが、救われたのは女手一つで育ててくれた母文子さん(54)のひと言だった。「最後までタスキを持ってきたことを誇りに思うって言ってくれたんです。陸上から逃げたい気持ちが、応援してくれる気持ちに応えないといけない気持ちに変わりました」。2週間後に練習に戻った。前回は聞こえなかったゴール前1キロ地点での家族の声援。笑顔で走り抜けたい思いが、復活への号砲だった。

 周囲は5区で青学大・神野との再対決を望む声もある。「5区だけが箱根じゃない。神野くんや山にリベンジではなく、チームの優勝に貢献して箱根にリベンジです。僕は集団で走るよりも前に人がいたほうが燃えるので、復路の最後で自分が抜いて優勝する景色も見たい。それは逃げじゃない」。最後の箱根路は、恩返しとリベンジの集大成だ。【鎌田直秀】

 ◆前回大会の5区VTR トップでタスキを受けた優勝候補大本命の駒大・馬場だったが、低体温症を発症して区間17位の大ブレーキ。10・4キロすぎに青学大の神野に抜かれ、22キロ手前まではなんとか食い下がったものの、限界を迎え1度目の転倒。明大、東洋大にも抜かれ4位に後退。ゴール直前でも3度転倒しながらタスキはつないだが、ゴール後に救急車で緊急搬送された。青学大はそのままの勢いで往路も制して完全優勝。駒大は巻き返したが2位に終わった。