【ドーハ=上田悠太】ファン投票で出場種目を決断する!? 男子50キロ競歩で優勝し、同種目で20年東京五輪代表に内定した鈴木雄介(31=富士通)がレースから一夜明け、表彰式で金メダルを受け取った。今後20キロでも五輪の代表権を獲得した場合、東京五輪では20キロ挑戦に気持ちが傾いていると吐露。両種目出場は否定。悩みは深いようで、SNSでどちらに出場するのがベストかアンケートを募るという、前代未聞のプランまでぶち上げた。

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金メダルを首にかけた鈴木は、正直な胸の内を吐露した。表彰台の頂点からの景色は「選ばれた人しか立てない。見られたのは幸せでした」と格別。しかし、レースは後半何度も止まりかけ、体は限界だった。気温30度を上回る中、50キロを歩ききることへの不安は脳裏に色濃く残った。「50キロはすごく怖い。暑い中で完歩できるかという恐怖感が今回は強かった。経験をして、それを拭えたかといえば拭えていない」。その上で20キロでも来年2月の日本選手権での優勝を目指し、東京五輪出場権獲得を狙う意向をあらためて示した。

東京で金を確実に狙うため、ダブル出場は「絶対ない」と否定。両種目で代表権を取った場合、どちらを選ぶかのか-。レース直後は「ぜいたくな選択をしたいと」と半々の気持ちで迷っていたが、一夜明けて、胸中は変わっていた。「今ちょっと20キロに偏っていますね」。50キロはもちろん、4年前に世界記録を樹立した20キロも「金メダルを取れる自信は持っています」。両種目とも金メダルを狙える力があり、そして、その思いが強いだけに「ぜいたく」とはいえ悩みは深かった。そして仰天のプランも披露した。

「SNSとかでファンの方に『どっちがいいですか?』とアンケートを取るのも考えて…。ファンの方が出て欲しいという方に出てもいいかなと思う」。五輪出場種目をファン投票で決める!? もし実現すれば、前代未聞だ。暑さの中、50キロを歩く苦しみ、恐怖を経験したからこその提言も。東京五輪のコースにもアスリート目線で「陰は欲しい。自分にとってもそうですし、完歩率を考え、他の選手にとっても。観客、ボランティア、運営の方々の健康も考えると、陰のコースにしていただきたいと強く願っています」。勝者は説得力ある“注文”も忘れなかった。