全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。5連覇を狙う旭化成、マラソン東京五輪代表の中村匠吾(28)を擁する富士通、同じく東京五輪代表の服部勇馬(27)がエースのトヨタ自動車が3強と言われている。前回初出場で5位入賞と健闘したGMOインターネットは、ルーキーの吉田祐也(23)が今月6日の福岡国際マラソンに2時間7分5秒で優勝した。粒ぞろいだったチームに新たなエースが誕生し、駅伝でも会社の事業戦略と同じ“ナンバーワン”を目指す。

1年前に吉田は、競技は大学までと決めていた。だが2月に2時間8分30秒の初マラソン日本歴代2位、かつ学生歴代2位を出したことで競技続行を決断した。

「この1年、マラソンで結果を出そうと取り組んできました。練習の質も量も、学生の頃よりできています。ペースが速くても30キロまでは気持ちに余裕を持って走れるようになりました。やってきたことが間違いないとわかってうれしいです」

花田勝彦監督は「書籍や論文を読んでマラソンをよく勉強しているし、練習の準備やケアにすごい時間をかけています。世界で戦える選手になる」と期待する。

マラソンに照準を合わせた練習だが、スタミナだけでなく走力自体が上がっている。5000メートルでは9月に13分36秒86で走り、今季だけで25秒も自己記録を更新した。11月の東日本実業団駅伝では最長区間の3区(16.8キロ)で区間3位。五輪マラソン代表の中村と中継直前まで競り合い、区間タイムは1万メートル27分台ランナー2人とほぼ同じだった。

ニューイヤー駅伝の主要区間でも、区間上位の走りが期待できる選手に成長した。

GMOは16年4月に創部。トラックで五輪2大会に、マラソンで世界陸上に出場した花田勝彦監督が指揮を執る。20年箱根駅伝4区区間賞の吉田、18年2区&19年3区区間賞の森田歩希(24)ら、青学大OBが多数入社している。

昨年は山岸宏貴(29)が世界陸上に出場、MGCでは橋本崚(27)が5位に食い込んで東京五輪候補選手(従来の補欠選手)に選ばれた。今年は吉田、下田裕太(24)、一色恭志(26)が2時間7分台、倉田翔平(28)が2時間8分台とマラソンで好記録が続出しているチームになった。

箱根駅伝常勝の青学大OBが目立つが、山岸と倉田は上武大出身で、今年の東日本実業団駅伝5区で区間賞を取った島貫温太(23)は帝京大OBだ。そして東大出身の近藤秀一(25)も今季、5000メートルで13分36秒19と自己記録を20秒以上更新。チーム最速ランナーに成長した。

ニューイヤー駅伝では、青学大の箱根駅伝初優勝時から3年連続で2区を走った一色が、吉田と4区(22.4キロ)候補の双璧をなす。花田監督は「一色がエース区間でエースらしい仕事をしないと、優勝が見えてこない」と期待する。

一色と吉田のどちらか1人が4区を任され、もう1人は5区(15.8キロ)か3区(13.6キロ)を担う。前回1区(12.3キロ)を区間5位と好走した倉田と近藤の、どちらかが1区でもう1人が3区候補だろう。

6区(12.1キロ)、7区(15.5キロ)には下田や同じく青学OBの林奎介(23)、渡辺利典(27)と箱根駅伝復路で区間賞を取っている選手たちが出番を待つ。選手個々のトラックの実績では3強に及ばないが、花田監督は「ウチはマラソンに取り組んでいてロードには強い」と、自信を見せる。

「勝つとすればどの区間で、というより7区間全部で勝つしかありません。全区間区間3位以内、あるいは区間賞から10秒以内の差でつなげば先頭が見える範囲でレースを進められます。5区が終わって20秒くらいなら、6区、7区で追いかけられる」

前回も一色と橋本を体調不良などで欠きながら、周囲の予想を大きく上回る5位に入賞した。今年の東日本予選でも富士通と7区中盤まで並走した。吉田の福岡国際マラソン優勝が起爆剤となれば、3強の一角を崩す可能性が感じられる。

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