女子200メートル決勝は、佐藤美里(宮城・常盤木学園3年)が23秒71(追い風2・2メートル)で悲願の初優勝を果たした。追い風参考ながら、上位5人が23秒台をマークする激戦の中、後続を0秒10差で振り切った。東北勢の同種目制覇は2017年(平29)の青野朱季(山梨学院大3年=山形中央出)以来4年ぶり8度目(7人目)、宮城県勢では初の快挙。東日本大震災から10年、津波被害を受けた石巻市出身で、復興途上の被災地に元気を届けた。

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「被災した1人として故郷を勇気づけたい」。6月下旬のU-20日本選手権200メートルを制した今季高校ランキング1位の佐藤が、追われるプレッシャーをはねのけ、レース前の公約を果たした。コーナーを抜け出すと追い風に乗ってぐんぐん加速。100メートル4位、400メートルリレー7位に続く3種目連続入賞を優勝で飾った。

勝利を確信したゴール後は重圧から解放され、笑顔とうれし涙が交錯した。佐藤は「集中していたので回りは見えませんでした。コーナーを抜けて前にいるように思えたけれど、焦らずに自分ならいけると踏ん張りました」と得意の後半勝負を振り返った。

自己ベストはU-20日本選手権の予選でマークした宮城県高校記録の24秒08。追い風参考ながら2レース連続で上回り、今季日本ランキング14位の実力を示した。予選5組を24秒54で制し、東北勢で唯一、準決勝に進出。やはり追い風2・8メートルの準決勝1組は23秒96の2位で決勝に進んだ。追い風で周囲のレベル(タイム)も高まる中、「参考になってしまいましたが、追い風は得意なので風に乗ることができました」と文字通りに追い風にした。

門脇小1年の時に、東日本大震災の津波で自宅が流失。知り合いが犠牲になる悲しみを味わった。「両親や先生やチームの仲間が支えてくれた。地元のみんなに(元気を)届けられたかな」と感謝の気持ちを表した。200メートル優勝後はアンカーを務める1600メートルリレー予選も始まった。「みんなで力を合わせて戦う高校最後の舞台。さらに勇気づけられたらいいな」と走り続ける。【佐々木雄高】

◆佐藤美里(さとう・みさと)2003年(平15)9月4日、宮城・石巻市生まれ。石巻中から陸上を始める。今季の主な戦績は、東北高校選手権100メートルと200メートルの短距離2冠(リレー2種目を含め4冠)。U-20日本選手権200メートル優勝。200メートルの自己ベストは宮城県高校記録の24秒08。家族は両親、兄、姉。161センチ