首位を1度も譲らない独走劇だ。女子の仙台育英(宮城)が、1時間7分16秒で史上最多5度目の優勝を果たした。

エース兼主将の米沢奈々香(3年)が1区(6キロ)、杉森心音(2年)が2区(4・0975キロ)、山中菜摘(3年)が3区(3キロ)で区間賞。後続も区間2、5位でつなぐ快勝で、トップと35秒差に泣いた昨年3位から巻き返し、2年ぶりに頂点に立った。男子の仙台育英(同)は、2時間2分59秒の3位で3年連続の入賞を決めた。

【全国高校駅伝・女子】仙台育英が最多5度目のV/ライブ詳細

女子の仙台育英は、先行逃げ切りの超速オーダーで、2年ぶりの都大路制覇を成し遂げた。釜石慶太監督(34)はレース1週間前には「1区杉森、5区米沢」の並びを思い描いたが、オーダー提出の3日ほど前に「直感めいたものがありました」と「1区米沢、2区杉森、3区山中」と3本柱をちゅうちょせず投入するプランに変更。第4中継所(4区から5区)で「タスキを落とす以外は完璧でした」と勝利の方程式を完成させた。

「日本人高校生最速」の米沢が1区で終始ハイペースを貫いた。スタート直後から1人旅で、19分15秒の区間賞で2位に30秒差をつけた。「自分のペースで行こうと思ったので、最初から早い入りで自分のリズムで刻んでいき、2位以降を離せるようなイメージで走りました」。今夏の全国高校総体は1500メートル2位、3000メートル3位で、ともに日本人トップの実力者は「みんなが、それぞれの区間で役目を全うし、優勝という結果をつかめたと思います」と力を込めた。

2区の杉森は憧れの米沢から初めてタスキを直接受け取り、エース道を継承した。2人は浜松・北浜中時代からの先輩、後輩関係で、杉森は後を追うように仙台育英に入学した。「一緒に優勝できたこと、タスキをつなげたことも、どちらもうれしかったです」。昨年の2区区間7位から真価を発揮。同区間の日本人記録を狙えるような攻めの走りで、12分41秒と区間賞。2位に56秒差をつけた。

3区の山中が涙の復活だ。今年3月の伊那駅伝で転倒し、左足脛骨(けいこつ)を骨折。クラスメートでもある米沢からは「絶対に間に合うから大丈夫」「都大路に一緒に出て優勝しよう」などと声をかけられ、必死にリハビリに励んだ。10月から本格復帰し、今季初の公式レースで9分53秒の区間賞締め。「自分の力というよりも、みんなの力で走れたと思います」と涙を流し、都大路で19年4区区間賞、昨年1区区間2位の実力を示した。

「至誠力走」のスローガンを体現し、女王に返り咲いた。【山田愛斗】

○…スピード勝負は負けない。女子の仙台育英は、都道府県予選の優勝タイムが出場47チーム中最速の1時間7分12秒。3000メートルの平均タイムも9分22秒32でトップ。そのデータを裏付けるように1区から3連続区間賞、4区区間2位、5区区間5位。釜石監督も「『間違いなく、全区間で区間賞争いができる』と言っていた通りでした」とうなずき「パーフェクト過ぎて怖いです」と笑った。

スピード豊富な選手が多い特性から練習量を例年比7、8割に抑え、17、19年に優勝した際の練習データを基準に、それを上回る質にこだわってきた。また、低い気温や強風の厳しいレース環境も「マル秘」という防寒対策や風に負けない強い体作りで乗り越えた。