甲子園で初優勝した野球部だけじゃない! 今月開催された全国高校総体陸上で、仙台育英(宮城)の陸上競技部長距離主将でエースの杉森心音(3年)が、12月の全国高校駅伝(都大路)2連覇につなげる快走を見せた。留学生6人が出場した女子3000メートル決勝で、日本人2位の9分10秒97で5位入賞。優勝した神村学園(鹿児島)のカリバ・カロライン(2年)とは18秒93差。日本人トップで全体4位の大阪薫英女学院の水本佳菜(3年)とは0秒75差だった。

仙台育英のエース杉森が、高校トップランナーの実力を示した。昨年、予選敗退だった全国高校総体3000メートル決勝で5位入賞。「目標の入賞が達成できてうれしかったです。でも、日本人1位を取るために(出場種目を)3000メートル1本にしぼったので、日本人2位になり、先生(釜石慶太監督)に恩返しができなかったことは残念です」。雪辱し、ホッとした気持ちがある一方で、より高いレベルを目指しているからこそ悔しさもあった。

入賞圏外からジャンプアップした。スタート直後、留学生6人が先頭集団を形成。だが、杉森はつかない。出場18人の中で10番手以降の位置取り。「最初は留学生につこうと思ったが、後半に落ちてしまうぐらい速いペースでした」。最初の1000メートルは3分ペース。焦らず、自分の走りに徹した。残り800メートルで初めて日本人トップに立つ。同400メートルで仕掛け、留学生第2集団の3人をかわして4位浮上。ラストスパートは大阪薫英女学院の水本に競り負けたものの、試合巧者ぶりを発揮した。

大好きな先輩の力を借りた。中学時代からチームメートで姉妹のような関係だった、仙台育英前主将の米沢奈々香(名城大1年)は、昨年の3000メートルで日本人トップの3位入賞。その米沢から決勝を前に「心音ちゃんなら大丈夫」と連絡が来た。そして、杉森は2月末の卒業式でプレゼントされたという、おそろいの水色のゴムで髪を束ね、気合を入れた。「奈々香先輩も一緒にいると思って走りました」。勝負グッズを身につけ、力が宿った。

後輩にも触発された。今大会は仙台育英勢が躍進。800メートルは壁谷衿奈(2年)が優勝し、1500メートルは渡辺来愛(くれあ、2年)が6位に入った。「衿奈ちゃんの優勝、来愛ちゃんの入賞に刺激を受けて走ることができました」。主将、エースの大役を担いながら大トリできっちり締めた。

秋から駅伝シーズンがスタートする。春夏はスタミナを強化。今後はスピードを磨いていく。仙台育英は昨年の全国高校駅伝で優勝。追われる立場だ。「自分がどういう走りをするかで、2連覇できるか、できないかが決まってくると思います」。エース区間は最長の1区6キロ。前回は米沢が区間賞で勢いづけた。今年は杉森が同区間を任される可能性が高い。

「奈々香先輩のように1人でレースを作って、速い選手というだけでなく、強い選手になれるように頑張っていきたいです」

93、94年に2連覇した仙台育英は、女子では令和初となるV2を狙う。その中心には絶対的エースの杉森がいる。【山田愛斗】