陸上女子800メートルの新潟県記録保持者で、医師免許を持つ広田有紀(27=新潟アルビレックスRC)が今季初戦に臨む。初の国際大会、ブリスベン・トラック・クラシック(25日、オーストラリア)に出場する。4月から新潟大医歯学総合病院で研修医として勤務しながら競技も継続。本格的な「二刀流」のスタートを前にアスリートとしての今季の手応えをつかみにいく。

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今季にかける広田の思いが初の海外レース出場選択に表れる。「3月に初戦がくるように調整してきた。レベルが高いけど、このくらい攻めないと」。ブリスベン・トラック・クラシックには例年、世界のトップクラスの選手が集結。左足第四中足骨の疲労骨折が判明した昨年6月の日本選手権以来の実戦に臆せずハイレベルな大会を選んだ。

昨秋から徐々に体を動かし、ケガは「今は違和感はない」と言う。今季の目標は日本記録2分0秒45の更新。自己ベストで21年日本選手権2位の時に記録した県記録2分4秒18を大幅に塗り替えることになる。ブリスベンは目標達成への感触を確かめる場になる。

4月3日から研修医の業務が始まると練習量、質は十分ではなくなる。年末から2月にかけ3度、沖縄で合宿を行った。追い込んだメニューやスピードアップのトレーニングなど徹底して走り込んだ。「合宿でため込んだつもり。それが今季、どこまで持つか」。4月以降は強化よりも調整がメインと割り切る。

20年に秋田大医学部を卒業後、研修医にはならず、新潟RCで競技に専念。21年東京五輪出場も視野に入れていた。ただ度重なるケガで力を出し切れなかった。そんな状況を見守っていたのが開業医でもある母美恵さん(61)。医師の道を願う母の気持ちに寄り添い、自分の目標もかなえる。どちらも妥協しないためにあえて「二刀流」に挑むことを決めた。

国家試験前と同じ勉強を日課にするなど競技と同じように仕事の準備もしてきた。「1日1日を無駄にしないようになった」とポジティブにとらえる。「今年ほど覚悟を持ってやる年はないと思う」と決意を強い言葉で示した。【斎藤慎一郎】

◆広田有紀(ひろた・ゆうき)1995年(平7)5月20日生まれ、新潟市出身。新潟高では女子800メートルで2年時に国体、3年で全国高校総体優勝。秋田大医学部に進み、16、18年日本選手権4位、19年のインカレ2位。20年から新潟アルビレックスRCに所属。165センチ、50キロ。血液型O。