187センチの15歳は、言葉に力を込めて言った。

 「将来はNBAでプレーしたい」

 バスケットボール男子の次世代のエース、田中力(15=神奈川・坂本中3年)はまっすぐな瞳で語った。

 「日本でNBAなんて無理と言う人は多い。でも無理じゃないこととを見せたいんです」

 U14、U16の代表を経て、昨年11月にA代表の合宿に初めて呼ばれた。男子史上最年少15歳で代表候補に入った。年上のBリーグ選手の先輩方に遠慮して「いいのかな…」とドリブルで切り込むことをためらったこともあった。シュートが入らずいらいらも募った。合宿中、母礼子さんに「自分のプレーができない」と嘆いていたという。

 同月のW杯アジア1次予選では出場メンバーから外れ、ベンチ後ろの観客席から試合を見届けた。

 「今のお前じゃ絶対に無理だよ」

 一緒に試合を見ていた、中学2年の神奈川県選抜でともに戦った友人に厳しい言葉もかけられた。上のクラスのプレーに触れて、より一層、強くなりたいとの思いが増した。

 今年2月の日本代表合宿。15歳はコートで自分のバスケットボールを体現しようと必死だった。そこには遠慮はない。

 「力、遅い!」

 20歳年上のアイラ・ブラウン(35=琉球ゴールデンキングス)やコーチから厳しい声が飛ぶ。田中も懸命にプレーでアピールする。

 「とにかく練習して強くなりたい」

 練習前には1時間半、日本代表の大村スキルコーチとともにハンドリングやシュート技術を磨いている。

 「出来るだけ早く代表に入ってユニホーム姿を見せたい」

 バスケットボールに対する貪欲さは、強いものがある。

 好きなバスケットボール選手はNBAボストン・セルティックの司令塔カイリー・アービング(25)。毎日動画を見て勉強しているという。

 「NBAのどこのチームでもいい。入れたら幸せ。今の目標です」

 そう言うと、さわやかに笑った。

 田中は夢に向かって、その速度をゆるめない。

 ◆戸田月菜(とだ・るな)1994年(平6)8月5日、福島・白河市生まれ。小学4年から大学までバドミントン一筋。17年入社。東京五輪パラリンピック・スポーツ部に配属され、初めての担当競技がバスケットボール、サーフィン、スポーツクライミング、カヌー他。