卓球ワールドカップ団体戦 会場を見つめながら関係者と話す水谷隼(右)
卓球ワールドカップ団体戦 会場を見つめながら関係者と話す水谷隼(右)

2020年東京オリンピック(五輪)のテスト大会、卓球W杯団体戦が11月6~10日、本番会場と同じ東京体育館で行われている。大会組織委員会が40人の職員を同大会の運営に送り込み、8つの項目でテストをした。

ここで注目したいのが「照明」だ。男子代表の水谷隼(30=木下グループ)は昨今のショーアップされた卓球会場について、照明などの影響で「球が見えにくい」などと指摘している。五輪では水谷が最も問題視しているLED看板はコート周辺に設置されないが、明るすぎる照明も卓球台に反射し、ボールを見えづらくさせる。

組織委幹部によると、五輪の照度基準は通常の大会の約2倍、2000ルクスが求められているという。今回行われたW杯団体戦は1300ルクスだった。

要望もとは五輪放送機構(OBS)だ。観客の豊かな表情を放映することが主な理由。それに加え、見栄えの良さ、高解像度の放送などに高照度が必要とされる。

これが選手や大会予算に重くのしかかる。日本卓球協会関係者は北京五輪の会場で「まぶしすぎて一日中いるのがきつく、サングラスを付けていた」と信じ難いエピソードを明かした。まだ目が良い状態だった16年リオデジャネイロ五輪で銀と銅メダルを獲得した水谷だが、今の芳しくない状態で、2000ルクスの明るさに対応できるのか、不安は残る。

OBSの高い要求が大会予算高騰の原因にもなっている。組織委幹部は「今後の五輪でこの要件を下げていかないとコストが上がる一方だ」と嘆く。最新の映像技術を追い求めすぎて、開催都市のお財布事情を苦しめている現状がある。

組織委も水谷の目の状態について、情報を確認している。少しでも選手が競技をする上で良い環境にできるよう、本番時は照明の角度を変えられる仕様にする。

マラソン、競歩を札幌に移転させた理由で、国際オリンピック委員会(IOC)は暑さ対策による「アスリートファースト」を強調した。しかし、遅きに失したと言っていい。東京都、組織委が取り組んできた暑さ対策に、IOCが真剣に取り合ってこなかったことが、ツケとなったと別の組織委幹部は言う。

卓球会場の照明問題も同じだ。OBSはIOCが設立した組織。そこに「アスリートファースト」はあるのか。ここ数年、すり切れるほど使われたこの言葉を聞くと、空虚に感じることさえある。【三須一紀】

卓球ワールドカップ団体戦 会場を見つめながら関係者と話す水谷隼(後方右)=2019年11月7日
卓球ワールドカップ団体戦 会場を見つめながら関係者と話す水谷隼(後方右)=2019年11月7日
水谷隼
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