バレーボールの女子日本代表(世界ランキング7位)が来年の東京五輪1次リーグ初戦で戦うケニア代表(同19位)に、日本人スタッフがいる。2019年4月から青年海外協力隊で赴任している片桐翔太氏(32)だ。日本仕込みの筋力トレーニングやデータ分析で、ケニアの3大会ぶりの五輪出場に貢献。「開催国で注目度が高い日本と初戦でできるのは、この上ない組み合わせ。とても感慨深い」と話し、本番に向け準備している。

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アフリカ予選を勝ち抜き、東京五輪出場権を手にしたバレーボールのケニア女子代表と片桐氏(左)
アフリカ予選を勝ち抜き、東京五輪出場権を手にしたバレーボールのケニア女子代表と片桐氏(左)

ケニア女子の東京五輪出場に、日本人スタッフが貢献した。1月に行われたアフリカ予選で、出場5カ国の総当たり戦を全勝して五輪切符を勝ち取った。フィジカルコーチとアナリスト(分析担当)の片桐氏は「身体能力だけでプレーしていた選手たちが、徐々に変わっていった」と手応えを感じている。

選手として、山形南高時代に全国大会出場経験があるが「トップ選手と比べ身体能力や技術で劣っていた」とプロは考えていなかった。バレーボールへの恩返しがしたいと、指導者の道を志した。海外から日本を見てみたいと思い、山梨大卒業後、青年海外協力隊員としてウガンダへ赴任した。現地の小学校で先生を務め、同時に国内リーグでプレーした。

その後アメリカなどでコーチ業をし、指導者として東京五輪に関わることを模索。ケニア連盟が女子代表の指導を協力隊員に依頼していたことを知り、自身2度目の隊員になった。

赴任した当初、特に役職などなかった。「練習を見ながら自分にできることを考えた」。英語を駆使してフィジカル強化やデータ分析の重要性を選手に浸透させた。体幹を鍛えてレシーブ強化に取り組んだり、自ら計算してサーブ効果率を割り出したり。日本仕込みのトレーニングが結果に結びつき、徐々に信頼を集めていった。

片桐氏は「ケニアと世界との差は縮まってきている」とみる。五輪が史上初の1年延期となったことも追い風。「伸びしろある若手がどんどん出てくる」と期待している。

アフリカ予選を勝ち抜き、東京五輪出場権を手にしたバレーボールのケニア女子代表と片桐氏(左から2人目)
アフリカ予選を勝ち抜き、東京五輪出場権を手にしたバレーボールのケニア女子代表と片桐氏(左から2人目)

新型コロナウイルスの影響は、ケニアにも影を落とす。在日大使館によると、4月27日時点で感染者数は363人、死者数は14人。片桐さんは現在、一時帰国している。3月下旬に日本に戻り約1カ月たったが、その間も代表監督や選手とSNSで連絡を取り合っている。「選手には自宅でのトレーニングを動画に撮ってもらい、アドバイスしています」と今できることを懸命に取り組んでいる。

アフリカ予選を勝ち抜き、東京五輪出場権を手にしたバレーボールのケニア女子代表と片桐氏(右から3人目)
アフリカ予選を勝ち抜き、東京五輪出場権を手にしたバレーボールのケニア女子代表と片桐氏(右から3人目)

ケニアは、早くから国際線を乗り入れる空港を閉鎖したため日本と比べ感染拡大は抑えられているが、そのため、片桐氏がいつ戻れるかは不透明だ。それでも「マラソンだけじゃないんだぞというところを見せたい」と、じっと耐え、片桐さんは来年夏を見すえている。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)