<高校ラグビー:常翔学園27-26伏見工>◇3日◇準々決勝◇花園

 Aシード常翔学園(大阪第1)が、伏見工(京都)に残り2分で逆転して4強に進出した。高校日本代表候補SH重一生(しげ・いっせい=3年)が3トライの活躍で、関西対決を制した。前身の大工大高が第75回大会に優勝して以来、17大会ぶり5度目の栄冠までマジック2とした。

 存在感は、別格だった。2点ビハインドの終了2分前。FBの位置に入ったSH重が、中央に切り込んだ。169センチ、80キロの体を上下左右に動かし、FWの密集を抜ける。「いくしかない。ここでとれないと危ない」。ゴール正面15メートルまで一気に迫って、相手の反則を誘った。SO後藤の逆転PGで、4強をつかんだ。

 接戦の節目に必ずいた。前半はSHで2トライ、後半は本来のFBに入って1トライ。大阪予選から一人二役をこなすが「ハーフに入って、パス練習が多くなって、手つきがよくなった。僕らの強みは最後まで攻めること」。高校日本代表候補の活躍で伏見工を倒した。

 つかまりそうでつかまらない。その動きがストロングポイントだ。昨夏にニュージーランド留学。日本では経験できない190センチ、100キロ以上の大型選手とプレーした。「しゃれにならないくらい、めちゃくちゃでかい」。強い圧力と強烈な当たりに、ステップワークで必死に対抗した。

 5月から8月までのホームステイ。異国の地で、懐かしい景色を思い出した。子どものころに、鹿児島・奄美大島出身の父秀一さん(43)と公園の砂場で相撲をとった。相撲では相手の脇に腕を入れて、脇を空けさせることが勝利の近道だ。眼前に迫る大型選手の脇にスペースがあった。「脇の下をくぐる。これならつかまっても相手の体が浮いているから力が入らない」。小兵力士のように脇に頭をねじ込み、すり抜ける新技を身につけた。異国の仲間から名前の一生(いっせい)にちなんで「イセイ」と呼ばれるほどなじんだ。

 野上監督は、重の成長について「ニュージーランドでもまれて、自信をつかんだだろうなと思う。周りをみながらプレーができている」と目を細めた。

 明日5日の準決勝は、国学院久我山と激突する。前身の大工大高時代から東西の横綱としてライバル関係にある。常翔学園に校名変更して初Vも近づくが「まずは準決勝です」と重。将来の目標に、海外でのプレー&日本代表を掲げる重が、再び相手FWをきりきり舞いさせる。【益田一弘】