高梨沙羅(19=クラレ)が女王の座を奪回した。1回目に96・5メートルでトップに立ち、2回目も最長不倒99・5メートルをマークして合計251・3点で3戦ぶりの今季12勝目。W杯得点を1410点に伸ばし、2位イラシュコ(オーストリア)に431点差をつけて、4戦を残して2季ぶり3度目の個人総合優勝を決めた。18年平昌五輪に向けジャンプを一から作り直し、自己新記録の10連勝をマークするなど圧倒的な強さを発揮した。

 いつもと変わらない風景だった。高梨は、2季ぶりのW杯個人総合優勝を決めても、派手にはしゃぐことはなかった。もちろん、今季の最大目標を果たし「このために夏場から練習を重ねてきたので達成できてうれしい」と喜びはあるが、「大事な試合が続くので1戦1戦集中したい」。もう先を向いていた。

 強い高梨が戻った。13、14日のリュブノ大会では2、4位と不本意な結果だったが、引きずらない。1回目96・5メートルで首位に立ち、迎えた2回目は、向かい風を得ると最長不倒となる99・5メートルまで飛距離を伸ばした。1週間で軌道修正。「前の試合から切り替えられた。(本番前の試技から)どんどん上げていけたので良かった」と笑みを浮かべた。

 初心に立ち返った。昨季は助走路の滑りが狂って個人総合3連覇を逃した。「課題が多すぎて何から手をつけていいのか頭の中がごちゃごちゃ」という中、春に助走姿勢の改善に乗り出した。振動する機器やパチンコ玉の上に板を乗せ、あえて不安定な助走姿勢を組む。短い時間で板がぐらつかないような位置に足を置けるか。幼少の頃のように基本練習を繰り返した。さらに「逃げたくなるほどつらい」という体幹トレーニングで土台が安定。助走速度をロスなく台に伝えることができ、飛距離が飛躍的に伸びた。

 来季への予行演習を最高の形で終えた。今大会は来年2月の世界選手権と同じ場所。良いイメージを作って大会に挑む高梨にとってプレ大会を制したことは大きな意味がある。五輪、世界選手権の2大大会で個人の金メダルはまだないが、より近づいたといっていい。「まだまだやらないといけないことは山積み。シーズンオフに整理して次のシーズンにつなげたい」。来季そして18年平昌五輪へ、絶対女王が主役を張り続ける。