【ミシソーガ(カナダ)27日(日本時間28日)=高場泉穂】フィギュアスケートグランプリ(GP)シリーズ第2戦スケートカナダの前日練習が会場で行われ、羽生結弦(21=ANA)は前戦で史上初めて成功したループなど4回転3種類を次々と成功させた。男子の4回転ジャンプの争いが激化する中、「ライバルは宇野選手だけじゃない」と発言。GP第1戦のフリーで4回転3本を決めて優勝した宇野昌磨に加え、今季シニアに参戦してフリーで4回転5本を跳ぶ米国の17歳、ネイサン・チェンの名を挙げた。

 来年4月まで続く長いシーズンのまだ序盤戦。羽生は高ぶりすぎないよう「気持ちを抑えて」練習したのと同じように、その後のミックスゾーンでも淡々と応じていた。だが、最後に少し語気が強まった。GP第1戦スケートアメリカで優勝した宇野の4回転フリップについて聞かれたときだ。とっさに「宇野選手だけがライバルじゃない。(4回転)フリップはネイサン(チェン)も跳ぶし、本数だけでいったらネイサンが多い。誰がライバルとかじゃなく自分がライバル。しっかり自分をみつめてやりたい」とまくしたてた。

 やっぱり気になる存在だった。米国の17歳ネイサンは今月初めのフィンランディア杯のフリーで4回転5本が認定され、フィギュア界に衝撃を与えた。宇野が4月に史上初めて成功させたループに加え、6種類中2番目に得点の高いルッツも備える。まだ粗削りだが、成長を続ければ来季の平昌五輪のトップ戦線に絡んでくる可能性がある。今大会は出場しないが、NHK杯(11月25日開幕、札幌)では直接対決が待つ。GP初戦を前に、新たなライバルが頭の中にあることが垣間見えた。

 だが求めるのは他人と比べての勝利ではなく、自分が満足できる絶対的な演技だ。前戦のオータム・クラシックではSP、フリーともに史上初の4回転ループを成功。フリーでは4回転ジャンプ4本に挑戦したが、うち2本失敗した。

 今回は「SP、フリー両方でノーミスするのが目標」。そのため、この1カ月間は曲を通した練習で滑り込み、体力のいるプログラムをこなすための力の配分を探ってきた。この日は4回転ループ、サルコー、トーループの3種類ともに練習で何度も決め「80、90点の出来」と納得した様子。「まず明日2本跳ぶ」と、SPへ気持ちを集中させた。