羽生史上最高ステップで4連覇が見えた。男子SPで、羽生結弦(22=ANA)が今季世界最高を更新する106・53点で首位に立った。ステップシークエンスでは規定が変更された12~13年シーズン以降で自己最高得点となる6点をマーク。アドリブで観客をあおるなど会場と一体となった演技で新境地を切り開いた。昨年銅に続く2季連続表彰台を狙う宇野昌磨(18=中京大)は86・82点の4位と出遅れた。

 2つ目のスピンを回り終わり、見せ場のステップ。羽生は、さぁ始まるぞとばかりにジャッジ席方面に向かい右手で手招きした。エレキギターの音に合わせ、激しいステップを踊るように氷上に刻んでいく。大歓声と手拍子に包まれ、気分はロックスターだった。

 リンクと2メートル弱しか離れていない観客席の方にも再びあおるように手招きし、最後の決めポーズへ。氷に右膝をつけ、滑りながら背中を反らせると会場の熱気は最高潮に達した。手招きのしぐさは本来の振り付けにはなく、気分の高まりでついた「アドリブです」。それほど気持ち良く踏んだステップは最高評価のレベル4がつくだけでなく、自身最高の6点を記録した。

 歌詞を口ずさみ楽しみながら、自身が持つSP歴代最高にもあと4・42点と迫った。「お客さんの歓声でプログラムが作られた。ライブです」。今季のSPは今年亡くなった米歌手プリンスの「レッツ・ゴー・クレイジー」。これまでジャンプと表現がかみ合わず苦戦してきたが、2週間前のNHK杯で「殻を破った」という。つかんだのは羽生の言葉で「コネクトすること」。観客との一体感を重視しながら滑る感覚だ。

 前日、初めて会場で滑った際には「(客席と)近いからこそ、こっちに引っ張ってくるような表現と押す表現とメリハリをつけたい」と独特の言い回しで見ている人との掛け合いを待ち望んでいた。狙い通り演技を「楽しめた」ことがステップシークエンスの高得点につながった。

 試合前はいい演技をしようと意識し「手足が震えるぐらいに緊張」していた。だが、冒頭の4回転ループでバランスを崩し着氷すると、ノーミスの重圧から解放された。4回転サルコー-3回転トーループの連続技、トリプルアクセル(3回転半)ともに2点以上の出来栄え点を稼いだ。滑り終えると「あとちょっと」というポーズをして悔しがった。ミスがあっても106点を出せたのが今の羽生の強さ。「伸びしろがたくさんある」。見えてきた完璧な演技、歴代最高得点超えまで、あと少しだ。【高場泉穂】

 ◆ステップシークエンス ステップとターンを入れ、リンクを広く使って滑る要素で、レベルはBから4の5段階。<1>時計/反時計回りの両方の回転の回数<2>上半身の動きの多様さ<3>ステップとターンの多様さ<4>切り替えの速さなどにより評価が決まる。ステップとターンは各6種類あり、こなした回数を測ることでレベルの要件となる。