深谷(埼玉)が長崎北陽台を19-7で下し、2大会連続の年越しを決めた。高校日本代表候補のFB山沢京平(3年)が仲間を自在に操りながら先制トライを演出。同校OBでパナソニックSOの兄拓也(22)からのエールに背中を押され、花園に成長の足跡を刻んだ。来年1月1日の3回戦では連覇を目指す東海大仰星(大阪第1)と激突。初の8強入りへ、5度目の挑戦となる。

 張り詰めた空気が漂う前半20分だった。得点は0-0。山沢は相手ゴール前で右からのボールを受けた。左タッチライン方向へサッとギアを上げ、右前方からのタックルを振り切る。次の敵は左前方から来た。瞬時にパスを選ぶ。ボールを託したWTB井下は、ライン際に作った小さなスペースを駆け抜けた。先制トライを見届けた男は「信頼していました」と笑った。

 これこそが、成長の証しだ。1年時から花園を経験。だが、自力での打開にこだわりすぎた。横田監督からは日常的に「調子が悪いときは周りを優先しろ。(自力で)行きたいときは行ったらいい」と諭された。実際、この日の自己評価は「全然ダメ」。それでも下級生3人のBK陣をまとめ、勝利をたぐり寄せた。

 兄拓也は深谷時代から日本代表入りする逸材。今季は筑波大4年ながら、パナソニックで主力としてプレーする。遠い背中は山沢の活力だ。「兄ちゃんは兄ちゃん、自分は自分。でも、兄ちゃんがすごいのは努力したから。もっと自分も努力しないといけない」。開幕前には、LINE(ライン)で「楽しんで来いよ!」と激励を受けた。

 西高東低が叫ばれる昨今の高校ラグビー界。東のシード校として横田監督は「こういうの(難しい初戦)をはね返さないと全国に認めてもらえない」と胸をなで下ろした。だが、次は王者との戦いが待つ。山沢は「相手との駆け引きを楽しみたい」。兄も立てなかった準々決勝の舞台は、関東の意地、全員ラグビーの先にある。【松本航】

 ◆山沢京平(やまさわ・きょうへい)1998年(平10)8月17日、埼玉・熊谷市生まれ。中1からサッカーと掛け持ちでラグビーを始め、高校入学後はラグビーに専念。花園は3大会連続出場。家族は両親と一人(JR東海)拓也(パナソニック)の兄2人。176センチ、78キロ。