新年度を迎え、20年東京五輪への戦いはさらに過熱する。日刊スポーツでは各競技の注目選手を「リオ→東京 継承者たち」と題して随時、紹介する。4月1、2日には、今夏の世界選手権代表選考を兼ねる柔道の全日本体重別選手権(福岡)が行われる。2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会女子52キロ級でワールドツアー史上最年少の16歳で制した阿部詩(兵庫・夙川学院高)が初優勝を目指す。

 世界のABEを証明する-。19日の全国高校選手権個人戦決勝。阿部は開始21秒、2月のグランドスラム・パリ大会男子66キロ級金メダルの兄一二三(19)と同じ得意技の袖釣り込み腰で一本勝ちした。「目指すは世界。こんなところで負けられない。東京五輪まで全試合勝ち続けたい」。あどけない表情でこう言った。

 5歳から柔道を始めた。中学3年の時には、全国中学大会で初優勝。高校入学後の昨年12月のグランドスラム東京で準優勝、先月のグランプリ大会で優勝するなど急成長を遂げている。

 成長の背景には、リオデジャネイロ五輪同階級銅メダルで休養中の中村美里(27)の存在がある。15年末、中村の所属先の三井住友海上の年越し合宿に参加。中村と組んで「ゾウとありんこぐらいの力の差」を実感した。「死ぬほど練習しないと五輪に出場できない」と危機感を覚えた。組み手強化のために上半身の筋トレに励み、苦手の寝技克服のために富士学苑高(山梨)などで武者修行を敢行した。

 日本女子代表の増地監督は阿部に「田村亮子選手のようになってもらいたい」と期待する。目標は「お兄ちゃんと東京五輪で金メダル」。3年後の本番に向けて、今年は兄妹で世界選手権を制覇する覚悟だ。【峯岸佑樹】

 ◆阿部詩(あべ・うた)2000年(平12)7月14日生まれ、神戸市出身。5歳で柔道を始める。中3の全国中学校体育大会では92年バロセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦の長女ひよりを下して優勝。昨年11月の講道館杯全日本体重別選手権で3位に入り、12月のグランドスラム東京は準優勝。得意技は袖釣り込み腰と内股。好きな食べ物はすし。158センチ。血液型B。