世界9位の錦織圭(27=日清食品)が、同19位のロベルト・バウティスタ(スペイン)に4-6、6-7、6-3、3-6で苦杯を喫した。ベスト16入りを逃した一戦を、亜大教授でテニス部堀内昌一総監督(57)が分析した。

 錦織のラリー戦での特長は、深いクロスにダウンザラインを効果的に組み込み、相手を走らせ、主導権を握るところにある。それが、全仏でのマリーやこの日のバウティスタは、錦織にセンター攻撃という新機軸を仕掛けている。

 センター攻撃は錦織の足元へ深いストロークを集めることにある。これでバウティスタからすればサイドアウトの確率は減る。さらに、中央の錦織は左右に打ち分けたとしても、サイドラインギリギリを狙わざるを得なくなる。かつ、深いクロスのラリーに比べると、中央にいる分だけ大きな角度をつけたストロークが打てなくなる。反対にバウティスタは多少振られても移動距離は短くなり余力を持って拾える。

 錦織が得意とする時間と場所を奪うストローク戦から、たとえ手数がかかっても、錦織に有効打を許さないラリーへと変化しつつある。さらに、場面に応じて今度は錦織を深いクロスやダウンザラインで走らすことに成功している。

 ラリー戦での錦織の優位性は、このセンター攻撃によって盤石とは言えなくなりつつある。ツアーを戦うトッププロはいわば、戦場を変えつつ一緒に移動していくクラスメートのようなもの。誰かが突破口へのヒントをつかめば、それはすぐに他のライバルに伝わっていく。センター攻撃という新しい対策に錦織はどんな手を打てるのか。息詰まるラリー戦のレベルが、またひとつ上がろうとしている。