「桃田を破った男」が日本の頂点に立った。男子シングルス決勝で、武下利一(28)が昨年覇者の西本拳太(23=ともにトナミ運輸)を2-0のストレートで破り、初優勝した。

 準々決勝で、今大会最大の注目選手だった桃田賢斗(23=NTT東日本)を撃破。その勢いを持続し、初の日本一を勝ち取った。

 「桃田を破った男」はリストラ寸前、崖っぷちに追い込まれていた。28歳。男子バドミントン選手では曲がり角の年齢だ。昨年は肩、腰のケガもあり、今年は日本代表からも漏れ、苦しい日々を送っていた。「ここで結果を出さないと、そう(リストラ)なる」との危機感を持って大会に臨んだ。

 だからこそ、処分明けで、2年ぶりの優勝を狙った桃田にも気持ちで負けなかった。準々決勝。過去の全日本ではベスト8が壁だった。しかも、今年は復帰した桃田に2戦全敗だった。「とにかく向かっていく。1本1本、強い気持ちでいけた」と、桃田戦に勝利すると、この日の決勝も前年覇者の西本を圧倒した。

 日本代表を外れていたこともあり、現在の世界ランクは95位。今回の優勝で日本代表復帰は確実。「なるべく早く海外で結果を残したい」。「桃田を破った男」は、リストラ寸前の崖っぷちからはい上がった苦労人だった。