男子でSP2位の宇野昌磨(19=トヨタ自動車)がフリー1位の184・50点を記録したが、合計286・01点の2位で初優勝を逃した。優勝したネーサン・チェン(米国)とは0・50点差で、12年の高橋大輔から続いた日本男子の連覇は5でストップ。わずかな差に泣いたが、前向きに18年平昌五輪代表選考会の全日本選手権(21日開幕、東京)を見据えた。

 表彰式を終えた宇野は、ずっと笑っていた。頂点との差はわずかに0・50点。1本のジャンプミス、スピンやステップの取りこぼし…。目前だった初優勝への「たられば」は、19歳にはなかった。

 「今回は本当に結果を気にしていません。0・50点差で負けたのは、そういう日だったということ。今の僕の実力です」

 痛恨は演技最終盤の3回転サルコーだ。当初は3回転トーループとの連続ジャンプを予定していたが、意図的に単発にした。中盤の4回転トーループが回転不足となり、3回転の判定であれば本数制限で付けられないと勘違いしていた。あらためてジャンプを数えると「そうじゃん! そんなこと考えずに、やって良かったんですね」と予定通りで問題なかったことに気付いた。それでも続けざまに「次、頑張りま~す」と一瞬で切り替えた。

 上位3人の記者会見では、海外メディアの質問に「満足な演技はできなかったけれど、今はなぜか満足しています」と笑わせた。前戦のGPフランス杯ではインフルエンザ明けで、練習不足を露呈。ジャンプは決まらず「ただただつらかった」と肩を落とした。そこから約2週間は充実した練習を積んだ。時差もない。自信を持って臨んだからこそ「もっとできたとは思わない」と言い訳しなかった。

 自然と次の目標は定まった。「今日は演技が終わってから(落ち着いて過程を考えて)笑顔になった。次は演技中に笑顔になりたい」。スケーティングや音楽の表現などが対象の演技構成点は91・36点でトップ。土台は着々と築かれており、ジャンプの精度次第では伸び幅がある。「全日本選手権は一番、僕にとっても大事な試合。ベストを出したい」。求めるレベルが、1段階上がった。【松本航】