カヌー禁止薬物混入問題を受け、日本連盟の春園長公常務理事は10日、加害者の鈴木康大(32=福島県協会)を事実上の永久追放にするとの見通しを明かした。鈴木は弁護士を通じて自筆の謝罪文を報道各社に送り、被害者の小松正治(25=愛媛県協会)は合宿先の石川県で心境を吐露した。薬物混入問題に付随して発覚した鈴木による窃盗問題の被害者は小松も含めて5人に上り、そのうち4人とは示談が成立していることも明らかになった。

 前代未聞の悪質な行為が判明した鈴木は、厳罰を避けられない見通しとなった。日本カヌー連盟は捜査終了後に理事会と社員総会で、除名処分を下す見込み。規則上、除名から2年以上が経過すれば、復帰ができる。しかし、同連盟の春園常務理事は「連盟内部としては、再入会は認められない。規定は適用しない」と、事実上の永久追放となる方向性を示した。

 同常務理事によれば、鈴木がパドルや金銭を盗んだ件について「4件、4選手と示談が成立している。4日に鈴木の弁護士を通じて連盟に報告があった」と説明。9月のスプリント日本選手権で盗まれた小松のパドルは、福島・二本松の漕艇場に隠されていたという。

 10年以降、大会や合宿で窃盗が発生し、同連盟は犯人を特定できなかったが、主要大会の監督会議等で注意喚起を行ってきた。そのような状況下での問題発覚に古谷利彦専務理事は「今までの対応が生ぬるかったとの指摘を受ければ、甘んじて受け入れます」と冷静に語った。

 同連盟は今回の問題を受け、再発防止に乗り出す。ドリンクの保管所を設け、監視カメラや有人で監視、ロッカー設置等の対策を検討している。山口徹正副会長は「早ければ3月27日から香川・坂出市で行われる、カヌースプリント海外派遣選手選考会から取り入れる」と、早急に取り組む姿勢を示した。12年ロンドン五輪前以来となる選手へのメンタルカウンセリングを実施する案も挙がっているという。

 今回の件に関して、同連盟には抗議のメールや電話は約100件届いた。今日11日にスポーツ庁の鈴木大地長官(50)を訪問し、おわびと今後の対策について報告を行う。