世界44位の大坂なおみ(20=日清食品)が、日本女子として初めて4大大会に次ぐ大会を制する快挙だ。同19位のダリア・カサキナ(20=ロシア)を6-3、6-2のストレートで破り、自身初のツアー優勝を“準4大大会”の快挙で飾った。日本女子がシングルスでツアー優勝するのは、15年10月にルクセンブルクオープンを制した土居美咲以来通算11人目。19日発表の最新世界ランキングで自己最高の22位にまで上昇した。次戦は20日開幕のマイアミオープンに出場する。

 想像を超えた才能が、ついに覚醒だ。大坂は、はにかみながら、日の丸を背に、初のトロフィーを抱いた。4大大会に次ぐ舞台で、7試合を戦い、セットを落としたのは、わずか1度だけ。「本当に勝ちたかった。マッチポイントが決まった瞬間は何が起きたか分からなかった」。小さく左手を握りしめ、天を見上げた。

 まさになおみ劇場だ。シャラポワにも、世界1位にも、決勝もすべてストレート勝ち。怖いものなしの10日間だ。優勝スピーチでもなおみワールドが全開。「ハロー!、わたしはなおみ…」と、自己紹介で始まる異例のあいさつで、何度も「何か忘れてないかな」と自問自答。落ちは「これじゃ、過去最悪のスピーチね」と苦笑いだ。

 スタートこそ「とても緊張していた」とミスが出た。しかし、粘る相手に、ベースラインから下がらずに、爆弾ショットを見舞った。第1セット3オールから、5ゲームを連取。最後まで主導権を渡さず、マッチポイントはバックのボレーで初優勝をたぐり寄せた。

 実は大坂は、ツアーだけでなくツアー下部大会を含めて、国際公式大会で1度も優勝がなかった。決勝に進んだのはツアーでは16年東レ・パンパシフィックの1度だけ。ツアー下部大会では5度あるが、すべて準優勝。その悔しさをビッグタイトル制覇で晴らした。

 22位は、4大大会でシードがつく位置だ。世界1位を破った後「記録を破るのじゃなくて、わたしが新たな記録をつくる」と豪語。日本男女通じて史上初の4大大会制覇も視野に入った。

 大変な“ごほうび”も待っていた。続くマイアミオープンの1回戦は、憧れの元女王S・ウィリアムズ(米国)との初対戦が待ち受ける。「彼女がいなければテニスはしていない」と言う。今季からS・ウィリアムズを長年サポートしたドイツのサーシャ・バイン氏と、米国人でトレーニング担当のアブドゥル・シラー氏から指導を受け、心身共に才能が開花した。和製セリーナが、勝利という最大の恩返しに挑む。

 ◆BNPパリバ・オープン 場所は変わっているが男子は76年、女子は89年に創設。4大大会に次ぐ男子は年間9大会あるマスターズ、女子は年間4大会あるプレミア・マンダトリー(PM)の1大会。しかし、今大会と20日から始まる同じPMのマイアミオープンは、開催期間が10日間と通常の1週間より長く、第5の4大大会といわれる。女子の歴代優勝者にはナブラチロワ(米国)、セレシュ(米国)、グラフ(ドイツ)、ヒンギス(スイス)、S・ウィリアムズ(米国)、シャラポワ(ロシア)らが名を連ねる。