世界ランキング13位の張本智和(14=エリートアカデミー)が、同9位の丹羽孝希(23=スヴェンソン)との5、6位決定戦に4-3で勝利し、20年東京オリンピック(五輪)に向けて弾みをつけた。互いにマッチポイントを握り合う熱戦は、張本に軍配が上がった。

 東京五輪を目指す張本にとって、世界ランキング日本人トップの丹羽は越えるべき壁だった。3-1で迎えた第5ゲーム。張本は10-7でマッチポイントを握ったが、ここから5連続得点を許し逆転される。「3-1でホッとしてしまった」。気持ちの甘さが出た。

 続く第6ゲームも落として迎えた第7ゲーム。8-10と逆にマッチポイントを取られた。ここで丹羽がタイムアウト。張本は「冷静になろう」。ひと呼吸入れると、ここから4連続得点で試合をひっくり返した。

 逆転劇の裏には伏線があった。「希望の光だった」と振り返った丹羽のタイムアウト、張本の脳裏には3月のトップ12の水谷との決勝が浮かんだ。ゲームポイントを握られつつも9-10と追い上げた場面。張本はタイムアウトを取った。その後、水谷にこの試合初めて、通常とは逆の横回転「YGサーブ」で翻弄(ほんろう)された。「あの時は自分がタイムアウトを取って負けた。今回は逆、行ける」。10-10と追いつきサーブ権を得ると、最後は迷わず「YGサーブ」でミスを誘い、やり返した。

 日本協会の宮崎強化本部長が「数回戦えば、すぐに相手の特長をのみ込む」という人並み外れた吸収力。小学生の頃、宮城県の学力テストでトップ10に入ったこともある頭脳派は、失敗を糧に成長を続けている。

 五輪男子シングルスの出場枠は世界ランキング上位2人で、張本は丹羽、水谷に次ぐ3位だ。「2人のどちらかを抜かないといけない」。世界1位樊振東を破った今大会、また1つ壁を乗り越えた。【戸田月菜】

 ◇丹羽孝希の話 最後、マッチポイントを握っていたので悔しい。張本選手が冷静にプレーしていた。最後、何のサーブを打つのか決まらなかった。