日大アメリカンフットボール部の守備選手の悪質なタックルで負傷した関学大の選手の父親が警察に被害届を提出した。

 スポーツのラフプレーで競技ルールの枠を超えて選手が法的な責任を問われることはまれだが、スポーツ法に詳しい望月浩一郎弁護士は「映像を見る限り」と断った上で「違法行為として傷害罪適用の可能性や、損害賠償請求の対象になり得る」との見解を示した。

 スポーツの世界で、例えばボクシングで相手を殴打しても暴行罪に問われないのは、刑法の「正当な業務による行為は罰しない」という規定が根拠にある。また、プレー中の接触で負傷や事故があっても、わざとではないというのが前提で、違法性は問われないのが基本的な考えだ。

 ただ、近年は社会人のサッカーで危険な接触プレーで脚を骨折させた選手に賠償命令が出た判決が関心を集めるなど違う流れも出ている。スポーツ法が専門の菅原哲朗弁護士は、今回の問題について「反則行為が故意か過失かが焦点になる」と説明した。

 悪質なプレーの故意性を証明するハードルは高いが、望月弁護士は「仮に故意と立証できなくても客観的に競技ルールで解決できる範囲を超えていれば、刑事、民事事件の対象になる」との見方を示した。

 両弁護士はさらに、今後の調査で前監督による指示や強制が明らかになった場合は、前監督にも傷害罪が成立すると指摘。日大側は「指導と選手の受け取り方に乖離(かいり)が起きたことが問題の本質」として、前監督による意図的な反則プレーの指示を否定している。