第一人者の野口啓代(29)が2位に入り、3大会連続でメダルを獲得した。6人で争われた決勝は各選手が4課題に臨み、野口は2完登をマーク。千葉啓史トレーナーと二人三脚でつかんだメダルだった。今季ボルダリングワールドカップ(W杯)年間女王の野中生萌(みほう、21=ともにTEAM au)は5位。リード、スピードを含めた3種目で争う複合の決勝(16日)に進む6人が確定し、日本勢は野口と野中が出場する。

決勝最終4課題目のトップホールド(突起物)に手をかけると、野口はぶら下がったまま何度もうなずいて感極まった。3課題目を2撃(2トライ目で完登)し、暫定3位で迎えた最終4課題目。決勝進出者の中で唯一の完登で2位に浮上。「優勝を狙っていたので残念な部分もあるけど、1、2課題目ができない中で3、4課題目で巻き返せてよかった」。2大会連続銅から1つ階段を上っての銀メダルにほほえんだ。

4月の今季W杯開幕から、ジャカルタ・アジア大会も含め転戦が続く今季、6月に千葉トレーナーと専属契約を結んだ。千葉さん独自の運動理論に基づいたトレーニングで、肉体を鍛え上げた。大会期間中も、体を左右にひねる運動やストレッチで体を調整。「1つもけがをせずに常に良い状態で臨めている。千葉さんの力は大きいですね」と感謝を口にする。

4課題目の登りから、千葉トレーナーは野口の進化を感じた。「腕の力だけでも体幹だけでも登れない。総合的な強さがついた。啓代だけが登れた精神力、体力が見えた」。登れた、登れないにこだわりを持ち、いい登りができても千葉さんにはだめな部分しか言わない。「啓代は満足しないし、プライドが誰よりも強い」。窮地に追い込まれた3課題目に臨む前、野口は「ここが勝負どころ。絶対登る」と気合を入れ直して、逆転の2位をつかみ取った。

東京オリンピック(五輪)方式の複合決勝にも3位で進出を決めた。「1個でも上の順位を狙いたい」。世界初の複合女王へ前進する。【戸田月菜】

◆野口啓代(のぐち・あきよ)1989年(平元)5月30日、茨城県龍ケ崎市生まれ。茨城・東洋大牛久高卒。小学5年で競技を始め、小学6年で全日本ユース選手権優勝。08年のボルダリングW杯モンタウバン大会(フランス)でW杯日本女子初優勝。9、10、14、15年と4度W杯総合優勝。14年、16年の世界選手権は3位。165センチ。