金星のカギは錦織のリターンだった。フェデラー撃破の勝因を、元デビス杯代表で日本テニス協会プロツアー委員長も務める辻野隆三氏(49)が、最もツアーを視察している目で、初登場の「Kei'sカルテ」で分析する。

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どうやってフェデラーの強烈なサーブを返球し、得意なストローク戦に持ち込むか。これがカギだった。特に第1サーブへの対策だ。前回対戦した2週前のパリでは、フェデラーの第1サーブが29本入り、そのうち、たった1ポイントしか奪えなかった。

この日も、タイブレークまではフェデラーの入った第1サーブ17本のうち、錦織は2ポイントしか奪えていない。しかし、タイブレークで錦織が2-1リード。続くフェデラーが2本のサーブで、ともに第1サーブが入ったが、両サーブともポイントに結びつけた。

多くの選手が、大事な場面で、錦織のフォアサイドにサーブを打つ。錦織は、フォアはクロスに引っ張りにくい握りで、脇が空くため、スイングがぶれやすく、一発があってもミスも多い。この日も、フェデラーは大半、錦織のフォアにサーブを打っていた。

タイブレークのその場面でも、第1サーブは2本ともにフォアサイド。錦織は、逆にフォアを狙ってくると読んでいたのだろう。しっかり対応し、深く返球。フェデラーのミスを誘った。その修正能力こそが、錦織の真骨頂だった。(元日本代表)