史上初の五輪5連覇への挑戦が始まる。レスリング女子で五輪4連覇の伊調馨(34=ALSOK)が、20年東京五輪代表選考の一歩を踏む全日本選手権は、20日に駒沢体育館で始まる。

22日に試合を迎える女子57キロ級には、リオデジャネイロ五輪女子63キロ級金メダルの川井梨紗子(24)がエントリーし、金メダリスト同士が争う世界一過酷な代表争いが火ぶたを切る。

伊調は被害を受けたパワハラ問題を乗り越え、10月の全日本女子オープンで復帰。優勝で今大会への出場権を手にし、東京五輪につながる舞台に歩を進めた。今大会の優勝者が来年6月の全日本選抜に勝った場合、同9月の世界選手権の代表に選出。そこでメダルを獲得すれば、母国開催の大舞台の代表に決まる。

川井には過去3戦3勝だが、最後の対戦は14年の全日本。2年間のブランクがあった伊調に対し、リオ五輪後も世界選手権連覇と勢い止まぬ川井。2人は直前の代表合宿での2ピリオドのスパーリングを実施し、組み手争いで優勢だった川井が押し込む場面が見られたという。互いに探り合いの状況ではあったようだが、互いに過去3戦とは全く異なる現状にある。

伊調の所属先の大橋監督は19日の監督会議後、「手の内の探り合いだと思いますが、良いスパーはしていました」と述べた。伊調の現状に関しては「技のキレはあるが、試合勘が心配です」と見通した。

2人のデータで見ると、国内外で無敵状態だった伊調に、唯一食い下がれる存在が川井だったと言える。

大幅なルール改正後の13年全日本選抜以降では、伊調は46勝1敗。勝ち星の内容ではフォール勝ちが8勝、テクニカルフォール勝ちが32勝、判定勝ちが6勝となる。敗れはしたがフルタイムを戦った日本人は、川井しかおらず、それも2度ある。内容は僅差とはいえないが、当時から将来の対抗馬として見られていた。その後、川井は苦渋の決断でリオ五輪での金メダルを目指すために階級を変更したが、伊調との決戦は本願だった。

若きライバルが力と自信をつけて、5連覇への道に立ちはだかる。ブランクの影響、川井の充実ぶりなどを考えれば、下馬評では不利が予想されるなか、師走の決戦に臨む。