日本女子のエース、西村碧莉(あおり、17=木下グループ)が、初代世界女王に輝いた。2回のランでトップに立った西村は、ベストトリック5回もノーミスで高得点を連発。地元ブラジルのレティシア・ブフォニ(24)に一度は逆転されたが、最終試技の劇的再逆転で優勝した。世界最高峰のストリートリーグ・スケートボーディング(SLS)も初制覇。20年東京五輪の金メダル候補に躍り出た。男子優勝候補の堀米雄斗(20=XFLAG)は、8位に終わった。

 

圧倒的なアウェーの中、西村は最後の「一発」に挑んだ。最初のランからトップだったが、直前にブフォニの5回目9・0で逆転された。リオ五輪バスケットボール会場だったカリオカ・アリーナを包むブーイングに負けず、大きなスライド技に成功して両手を顔の前に掲げるガッツポーズ。再逆転に必要な8・5が出ると、ボードを投げつけて悔しがるブフォニを横目に喜びを爆発させた。

最終試技で劇的優勝を決め「信じられないくらい、すごくうれしい。難度の高い技を狙い、それが成功した」と振り返った。五輪スケートボードを管轄するワールドスケート主催の世界選手権で初代女王に輝き、SLS最終戦でも日本女子として初出場した16年の5位、昨年の4位から一気に頂点へと駆け上がった。

「自分ができる1番の滑りができた」と笑顔で話したが、試合中は体調不良と闘っていた。2日前から悩まされた耳の激痛で「まともに座っているのも、しんどかった」。それでも、抜群の集中力で計7回をミスなくメーク。昨季SLS1位のベイカーや同2位のブフォニら強豪を抑えた。

17年10月に左ひざを負傷し、昨年の前半を棒に振った。リハビリ中に見た平昌冬季五輪。スピードスケート女子の活躍に「あの大舞台で金メダルをとるメンタルはすごい。精神的に強くなるのが目標」と話した。目標の1つだったアジア大会(8月)は逃したが、世界一への思いは増していた。

東京五輪は「最終目標ではない」と話す。それでも「せっかく日本でやるし、出られたら頑張りたい」と意欲もみせる。今月1日からは多くの五輪有望選手が活動する木下グループと所属契約を結ぶなど、五輪に向けて準備を進める。「地元が盛り上がるし、応援してくれる人もたくさんいる」と話す東京生まれの17歳の目の前に、東京五輪の金メダルが見えてきた。

 

◆西村碧莉(にしむら・あおり)2001年(平13)7月31日、東京都生まれ。7歳からスケートボードを始め、16年SLS最終戦5位。17年第1回日本選手権を制し、同年のXゲームで優勝。SLS最終戦は4位。直後に左ヒザ前十字靱帯(じんたい)を痛めて再建手術を受けるも、18年Xゲーム2位で復活した。158センチ。

 

◆東京五輪スケートボード 開催都市提案の追加種目としてストリートとパークの2種目が行われる。競技を管轄するのは国際ローラースポーツ連盟から名称を変更したワールドスケート。ストリートは階段や手すりなど街中の障害物を模したコースで技を競うもので、今大会は「ラン」を2回、一発技を競う「ベストトリック」を5回行い、計7回の試技から得点の高い4回の合計点を争う。五輪でも今回のSLS方式採用が濃厚。パークは複数のボウルの中で技を出すもので昨年11月には第1回世界選手権が開催され、女子で四十住さくら(16)が初代女王に就いた。