アメリカンフットボールの名門、関学大の鳥内秀晃監督(60)は11日、19年シーズン限りでの退任を表明した。同部の祝賀会が大阪市内で開かれ、自身で「報告があります」と切りだし「来季を持ちまして監督を退こうと決めています。去年から決めていました」と約400人のOB、後援会、学生らが見守る中で発表した。

関学大の契約職員である鳥内監督は、92年監督就任以来、4年任期ごとに契約を更新。19年度で28年目という歴代最長の監督業を走り抜けて勇退となる。「このまま長くやっていても、代替わりしないと次の5年、10年ができるわけがない」と、指導者の世代交代を退任の理由にした。

毎年全選手の面談を実施し目標や考えを聞き、学生の自主性を重んじる指導を貫いた。監督として甲子園ボウル優勝11度、関学大史上では唯一となる02年ライスボウル優勝。自身は関学大での現役時代、4年連続で日大に甲子園ボウルで敗れた。そんな悔しさを精神論だけでなく、大学卒業後の米国留学で培った理論などでも学生に教え込んだ。

昨年5月には日大の悪質タックルで所属選手が被害者となった。競技の信頼性さえ失いかねない社会問題に発展し、「うちではありえない。汚いプレーはフットボールではない」と主張した。正々堂々のプレーで昨年は甲子園ボウルで最多優勝記録を更新する29度目の学生日本一に輝いた。鳥内イズムを学生と体現した。

名将は「これだけ長いこと(監督を)やると思っていなかった。最後に目標を達成した時の選手の顔を見るのが楽しみ」という。春から始まる最後の1年へも「最後だから頑張るというのはない。毎年一緒。毎年新しいチームでどうやっていくか考えるだけ」と熱く、冷静に戦う。後任は未定だが、大村和輝アシスタントヘッドコーチらが候補になりそうだ。【鶴屋健太】

 

◆鳥内秀晃(とりうち・ひであき)1958年(昭33)11月26日、大阪市生まれ。摂津高時代はサッカー部で全国選手権出場。関学大監督だった父昭人氏(故人)の影響で関学大でアメフトを始め4年時に副将。86年関学大守備コーチ、92年監督に就任。息子3人にも同部で指導した。16年大学世界選手権日本代表監督。家業の製麺会社も経営する。