第一人者の野口啓代(29)が、2年ぶり7度目の優勝を飾った。今季はボルダリング、スピードのジャパンカップで表彰台に立ったものの優勝には届かず。3種目目のリードで“3度目の正直”、ようやく優勝をつかんだ。男子はボルダリングで国内大会3連覇経験もある藤井快(こころ、26=TEAM au)が決勝で唯一完登(かんとう)し、初優勝を飾った。

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表彰台の中央に立つと、野口はほっとしたような笑みを浮かべた。8人で争われた女子決勝で41手目に壁の縁沿いのホールド(突起物)に手を伸ばしたところで力尽きた。40+の高度を獲得。同高度の森秋彩を、準決勝の順位で優劣をつけるカウントバック方式で上回った。「今季はボルダリング、スピードと優勝できていなかったので、久しぶりの優勝はうれしいです」と何度もうなずいた。

「優勝以外は負けと同じ」と言い切る。今季は3種目の複合で行われる20年東京オリンピック(五輪)を見据え、3種目をバランス良く練習してきたものの、ともに東京五輪を目指す野中生萌(みほう)がここまで2冠。負けられなかった。

関東近郊の数少ないリード壁に出向いて週に2日は登り込んだ。「リードでは命綱をクリップ(支点)にかける時に、どうしても片手で支えなければならない」。リード対応に磨きをかけ「練習が結果になったのが一番の収穫」と喜びをかみしめた。今後は4月開幕のボルダリングW杯、東京五輪出場権のかかる8月の世界選手権などが続く。「これで自信を持っていけます」。胸を張って、歩みを進める。【戸田月菜】

○…初優勝した藤井は「初めて決勝で完登できた。完登したいとの思いが現実になった」と笑顔を見せた。決勝では終盤に長くレスト(壁上での一時休息)を取り一気にトップホールドまで登り切った。得意のボルダリングではなくリードでの日本一にも「決勝で唯一の完登にはなったけれど、他にも登れる人はいるので」と控えめだった。