小林陵侑(22=土屋ホーム)が日本勢初の個人総合優勝を決めた。1回目127メートル、2回目126メートルで5位となり、個人総合2位のカミル・ストッフ(ポーランド)に500ポイント差をつけ、5試合を残して総合優勝が確定した。

4戦ぶりに表彰台は逃したが、今季23戦11勝で表彰台は日本勢シーズン最多の16度。第2戦の初優勝から一気に頂点に駆け上がった。

W杯が始まって40シーズンたち、欧州勢以外で初めて日本の小林陵が個人総合優勝を果たした。

持ち味は抜群のセンスと身体能力。15年土屋ホームに入社したが、高校1年ですでに声をかけられるほどだった。入社2年目で初めてW杯にフル参戦したが、30位以内に入れず2回目に進めない屈辱を個人17試合すべてで味わった。想像していなかった世界との壁に帰国時は「厳しいっす…」と落ち込んだ。オフには周囲が「目の色が変わった」というほど練習に貪欲になった。翌シーズンの平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)ノーマルヒルでは日本勢最高7位。手応えを得て臨んだシーズンだった。

崩れない強さがある。今季、体の動かし方をより頭で考えられるようになった。昨年、土屋ホームスキー部は若手に脳波トレとメンタリストによる座学を導入。骨格から神経、呼吸まで体のつくりを学んだ。オフの沖縄・宮古島合宿や、W杯から一時帰国中の短い期間でも行った。新しい試みに「数十万では足りない」(スキー部関係者)という額の予算を計上。積み重ねてきたものに今季は理論も備わり無敵状態となった。小林陵は今季の躍進に「会社のおかげ」と常に感謝を口にしている。

長野五輪金団体メダルメンバーの原田、船木やレジェンド葛西ら日本の名ジャンパーが届かなかった大きなタイトルを手にした。今季はW杯で偉大な選手の記録を次々と塗り替えたが、注目を集めるたびに口にするのが「まだ自分は五輪で金メダルを取っていないので」。無限の可能性が詰まっている22歳は、どん欲に進化を続ける。