男子ショートプログラム(SP)3位発進の羽生結弦(24=ANA)が22日、23日の男子フリーに向けて、会場のさいたまスーパーアリーナで公式練習を行った。

フリーの冒頭で跳ぶ予定の4回転ループを18本中7本着氷。成功率は高くなかったが、8連続で試すなど意地を見せた。12・53点差で1位のネーサン・チェン(米国)を追いかけ大逆転Vを狙う。

意地が詰まった40分間だった。正午すぎの1度目の公式練習を回避して臨んだ夕方の2度目の機会。羽生は4回転ループを何本も跳び続けた。この日最初のジャンプは1回転と不発で、曲をかけた練習でも失敗。その後の1本目も失敗するとエンジンがかかったのか、休む間もなく8連続トライ。途中、1度着氷したがバランスを崩して納得いかず、連続の6度目でようやく鮮やかに着氷すると続く2本も決めた。しかし2度の転倒や、跳んだ瞬間に回転がほどけるミスが目立ち「ダメだ」と漏らす場面も。18本目で何とか着氷させてから練習を終えた。

フリーではループ、サルコー、トーループの3種類の4回転ジャンプを跳ぶ予定。ループは冒頭のジャンプだけに、成功するかどうかで結果は大きく左右する。しかも昨年11月のグランプリ(GP)シリーズロシア杯で、右足首を負傷したジャンプ。重圧もかかってくる。「今の試合に集中したい」と話していた。その言葉通り、全神経を研ぎ澄ませる。

21日のSPでは、得意なはずの冒頭での4回転サルコーでミス。2回転の判定となり点数が0に。残りのジャンプをまとめたが得点は伸びなかった。自国開催の大舞台。1万8000人のファンの期待を受けすぎて、力みすぎたことを反省した。

世界選手権過去2度の優勝は、どちらもフリーでの逆転だった。17年はSP5位発進から、自己最大となる10・66点差をひっくり返した。今回はそれ以上の点差があり、相手も昨年覇者のネーサン・チェンとあって容易ではない。それでも羽生は、SPの演技終了後に「こういう時の対処法は分かっている。ものすごく悔しいので、フリーに向けて頑張る。これまでの経験を使っていきたい」と語った。五輪2連覇の王者の意地をリンクの上で見せる。【佐々木隆史】