【パリ=吉松忠弘】18年全米、19年全豪に続く4大大会3大会連続優勝を狙う世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、驚異の逆転勝ちで2回戦進出だ。

同90位のアンナ・シュミエドロバ(スロバキア)に0-6と完封されながら、7-6、6-1で勝ち、ツアー本戦区切りの100勝目に花を添えた。これで、4大大会の連勝は15に伸びた。

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赤土の大坂劇場が幕を開けた。第1セット、1ゲームを奪えずにまさかの完封負け。18年全米優勝後、初めて完封で失ったセットが尾を引いた。第2セット、5-6で、敗退まで残り2点と追い込まれること5度。そこから驚異の逆転劇だ。「とてもタフな試合だった」と振り返った。

重圧で胸が張り裂けた。雨が、それに輪をかけた。球やコートは湿気を含み、重くなった。「雨、風、コンディションにアジャストするのが大変だった」と言う。球は膨れ、重みで飛ばず、大坂のパワーの勢いをそいだ。相手が拾いまくり、ミスを減らした分だけ、早く決めたい大坂の焦りが増した。

第1セットで完封された後、第2セットは3-0とリードした。そこで、雨が激しくなり、約8分間の中断。ロッカーに1度は戻ったが、すぐに再開し、そこからリズムが狂った。4-5、5-6で相手のサーブと、キープされたら終わりの場面で何とか追いつき、タイブレークをもぎ取った。「とてもナーバスになった。そこから持ち直すのが課題だった」と我慢した。

敗れていれば、68年オープン化(プロ解禁)以降、17年ケルバー(ドイツ)に次ぐ、2度目の第1シードが初戦敗退という屈辱だった。第2セットの後半では、ベンチでタオルで顔を覆い、肩をふるわせた。しかし、その土壇場から、世界女王の意地で見事に復活した。

波乱が多いことから、赤土にはテニスの悪魔が住むと言われる。その悪魔に魅入られた選手は、どんな選手でも逆らえず、早期敗退に追い込まれる。その悪魔から、大坂は自力で逃れることに成功した。

2回戦は世界43位のアザレンカ(ベラルーシ)と対戦する。