<テニス:全仏オープン>◇31日◇パリ・ローランギャロス◇男子シングルス3回戦

まるでジョコビッチとナダルの試合を見ているようだった。お互いが持てる能力を100%出し切った激闘。決勝戦と言ってもいいほどハイレベルな打撃戦を制したのは、錦織のリターン力だった。

勝負が決した最終セット第14ゲーム。錦織の挙げた4ポイントはすべて好リターンでジェレのミスを誘ったもの。フォアとバックで2本ずつ、しっかりサーブのコースを読み、相手コート奥深くに返球した。それまでに布石を打っていたからこそのプレーだった。

錦織は序盤からジェレのサーブに工夫を凝らして対応した。特に第2サーブには頻繁に構える位置を変えた。彼独特の感性なのだろう。後方に構えて確実に返球したかと思えば、ベースラインに近づいてリターンエースを決める。特にバックのストレートの精度はジェレに警戒心とダメージを与え続けたはずだ。

事実、ジェレの第1サーブの確率は第4セット以降、急激に低下している。しかも、錦織のフォアサイドへのサーブが明らかに多くなった。錦織はコースも読みやすくなっていたのだろう。4時間26分の戦いで1つのミッションを貫いたことが勝因だった。(亜大教授、テニス部総監督)