東京オリンピック(五輪)で初採用されるスケートボードに、12歳の金メダル候補が誕生した。パーク女子の岡本碧優(みすぐ、Proshop Bells)が圧倒的な強さを見せて優勝。東京五輪の予選対象となる大会で本場のファンを驚かせた。

昨年の世界選手権5位で初めて招待選手として出場した岡本は、準決勝を2位に15点の大差をつけてトップ通過。この日の決勝でも1本目で58・16を出してトップに立つと、優勝決定後の「ウイニングラン」となった3本目では63・16をマーク。2位の55・00を大きく引き離すと、ボードを高々と掲げて声援に応えた。

「優勝できるとは思っていなかったので、びっくりしました」。優勝インタビューでは、戸惑いながら話した。それでも、滑りは圧倒的だった。エアの高さと空中感覚の良さで次々と大技を決め、コース上部の縁(コーピング)を使ったトリックも正確に決めた。昨年世界選手権優勝の四十住さくら(17)は5位、中村貴咲(19)も7位、日本のトップ選手がミスで完走を逃す中、3本とも45秒を滑りきった。

スケートボードとの出会いは小2の時。「兄がやっていて、楽しそうだったから」始めた。今大会のパーク男子準決勝に日本勢で唯一残り、10位になった笹岡建介(20)と同じ岐阜市のプロショップ・ベルズに所属。笹岡の兄拳道さん(26)が開くスクールで「いろんなトリックを教えていただいた」と話す。

昨年12月からはスケートボードに専念するため笹岡家に下宿。今春から岐阜市内の中学校に通う。この日のインタビューでも「笹岡家のサポートがあって、できている。ありがたいです」と笹岡兄弟に感謝した。

141センチ、36キロ。表彰式で並ぶと2位のアーマント(26=フィンランド)はもちろん、3位になった10歳の開心那(ここな)の150センチよりも小さい。それでも、ボードに乗れば存在感は抜群。東京五輪へのスタートとなる予選大会で圧勝し、7月に中国・南京で行われる国際オープン、付与ポイントが大きい9月サンパウロでの世界選手権にも弾みをつけた。

この日、2本目終了時までは上位3人を日本勢が占めた。女子のパークを席巻する日本の若きスケーターたち。岡本は、その中心に躍り出た。「チャンスがあれば東京(五輪)に出てみたい」と話していたが、そのチャンスを自らの手でつかもうとしている。

 

◆東京五輪への道 出場枠は両種目男女各20人で、1カ国最大3人。来年の世界選手権(未定)上位3人以外は、ワールドスケートによる五輪ランキング上位17人が決まる。同ランキングは来年5月31日までの予選対象大会で決まる。ポイントは世界選手権、SLSなどプロツアー、国際オープンなど5スター大会の順で大きい。日本のパーク女子はメダル独占もあるほどレベルが高い。

ストリート女子は世界女王の西村を筆頭に織田、伊佐、中山、藤沢、同男子も堀米に白井、青木、池田らが続く。パーク男子は笹岡が有力、平野ら2番手は微妙か。五輪出場に年齢制限はない。