男子走り高跳びで戸辺直人(27=JAL)が2位に入り、ダイヤモンドリーグ日本人最高順位を達成した。記録は優勝したボーダン・ボンダレンコ(29=ウクライナ)と同記録の2メートル28。

今季世界最高は男子では3000メートル障害のゲトネット・ワレ(18=エチオピア)が8分06秒01、円盤投げのフェドリック・デカーズ(25=ジャマイカ)が70メートル78、女子では1500メートルのゲンゼベ・ディババ(28=エチオピア)が3分55秒47と3種目でマークされた。

 

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今年の室内競技会シーズン(1~3月)に2メートル35の日本新記録と、ワールド・インドア・ツアー日本人初優勝の快挙を成し遂げた戸辺が、ダイヤモンドリーグ日本人最高順位という新たな肩書きを自身につけ加えた。

走り高跳びは1~4位が2位メートル28の同記録だった。4人全員が次に挑んだ高さを跳べず、2メートル28を1回目に成功したボンダレンコと戸辺が残りの2人より上位になり、上位2人の順位差は2メートル28までの失敗試技数によって決まった。戸辺は2メートル19で1回、2メートル25でも1回と、低い高さで失敗していたことが響いた。

しかし6日のローマ大会では2メートル15の11位だった戸辺が、10日後のラバト大会までに立て直したのは見事だった。戸辺は自身のツイッターに「DLRomeから難しい10日間でしたが、何とかまとめることができました」と短くコメントした。

戸辺はワールド・インドア・ツアーから帰国後、2メートル40を跳ぶために踏み切り位置を遠くする変更に取り組み始めた。「室内で2メートル35(日本記録)や2メートル33を跳んだときも、バーに近いな、と思いながら跳んでいました。最高到達点がバーの向こう側にあるんです。それを手前にずらせば記録も上げられる」

だがその作業は簡単なことではない。「視覚的にバーをとらえる時間差が生じて対応が難しいし、空中動作も修正しないと対応できない。今シーズンを通じての課題となる可能性もあります」と、3月の取材時点で話していた。

4月のアジア選手権は2メートル26で3位。「2メートル29で踏み切り位置を見失った」という。5月のゴールデングランプリ(大阪・長居)は強風で全体的に記録が低調だったが、「遠い踏み切りは風の影響をより受けやすい」なかで2メートル27で優勝したことは評価できた。

良い方向に向かっていたがローマ大会で再び崩れてしまった。

「踏み切り位置がある時は遠過ぎ、ある時は近過ぎるといった感じでした。2メートル19の3回で調整できず、2メートル15で終わってしまった」

だがラバト大会前には「ローマ後のトレーニングは問題なく進めることができたので、ラバトではしっかり跳べると思います」と話していた。

2メートル40を目指す戸辺の新たな取り組みが形になりつつある。それを示したラバト大会のダイヤモンドリーグ日本人最高順位だった。

 

◆今季の男子走り高跳び

例年にない低調なシーズン序盤となっている。

ダイヤモンドリーグは3試合で実施され、5月の上海大会は昨年のアジア大会金メダリストの王宇(27=中国)が2メートル28で優勝。ローマ大会とラバト大会をボンダレンコが連勝したが、記録は2メートル31と2メートル28にとどまっている。

今季世界最高はボンダレンコ、王ら5人が2メートル31で並び、衛藤昂(28=味の素AGF)が2メートル30で6位タイにつけている。

ボンダレンコは世界歴代3位の2メートル42を持つ選手で、ケガから復帰してきたばかり。世界歴代2位の2メートル43を持つムタス・エッサ・バルシム(27=カタール)も、昨年のケガで今季はまだ試合に出ていない。

バルシムも復帰してくるようだが、9月開幕の世界陸上ドーハ大会は2メートル30台後半の優勝記録になるのではないか。