世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、新たな扉を開けようとしている。

昨年とは全く異なったプレースタイルで、勝利をもぎ取り、2連覇に向け1歩を踏み出した。「すごい試合をしようと思ってなかった。マッチポイントだけ取ることを考えていた」。同84位のアンナ・ブリンコワ(ロシア)に6-4、6-7、6-2のフルセットで勝ち、2回戦では、同53位のリネッテ(ポーランド)と対戦する。

最後まで明るく笑顔だった。怒ることもわめき散らすこともほとんどなく、冷静に試合を運んだ。見かけは接戦だが、大坂が、テニスというゲームを、しっかりと組み立て、勝ちきった試合だった。

間違いなく、次への高みに向け、ステップアップを始めた。持ち味のパワーで、相手を打ち負かすプレーは、安定と展開でポイントを奪えるプレーに変貌を遂げている。「ヒートアップしちゃうと、必要もない強打をしちゃう。でも、それを克服できている」。

まずはフォアハンドだ。たたき込むようなフォアは、大坂の最大の武器とされた。昨年は、そのフォアとサーブで、相手をたたきつぶした。しかし、この日は、球に縦回転をかけたフォアで、ネットの高いところを飛ばしミスを減らすことを心がけた。

これまでも、安定だけを考えた縦回転の球を使うことはあった。しかし、この日は、そのショットを鋭角に打ち、相手を外に追い出し、空いたコートにストロークを打つ戦略として使用した。サーブも、スピードに頼らない。コースと球種を打ち分け、相手の読みを外すことでエースを奪った。

最も変わったのは、相手の第2サーブに対するリターンをする時の大坂の立ち位置だ。従来なら、リターンをたたき込むため、サービスラインに近いところに立った。しかし、この日はベースライン上か、そこから半歩内側。バウンドする位置から、やや遠めに立ち、しっかりと球種やコースを見極め、返球することを心がけた。

スタイルが変わる時は、必ず生みの苦しみが生じる。この日のフルセットは、勝利への苦しみではなく、大坂のテニスが生まれ変わるための苦しみだった。過渡期には、負けることもあるかもしれない。しかし、それを乗り越えた時、その強さは揺るぎないものになる。

◆全米オープンテニスは、WOWOWで8月26日~9月9日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。