【シュツットガルト(ドイツ)9日=阿部健吾】体操の世界選手権は男子団体総合決勝が行われ、日本は6種目合計258・159点で昨年に続く3位となった。技の正確さなどを示すEスコア(出来栄え点)で差をつけられた1年前の教訓から、徹底的な基本指導、他国研究などを行った成果はみせた。今後は東京オリンピック(五輪)での2連覇、王者奪還へ向けた国内での代表争いが待つ。ロシアがソ連時代以来28年ぶりの優勝、中国が2位で2連覇を逃した。

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最終の床運動を終えると、日本の選手は互いに肩をたたき合った。新エースの期待も故障に泣いた谷川翔、予選では4種目でチーム最多ながら床運動で失敗した橋本大輝。2人の悔し涙はただ、戦えた手応えがあったからこそ。上位2カ国との差に絶望感もあった1年前のドーハとは、涙の意味は違っていた。水鳥監督は「去年はここまで差があるのかと痛感させられた。かなり成長してよくやった。希望は感じられた」と感触を口にした。

ベスト布陣ではなかった。直前練習で谷川航が故障し、この日は2種目。翔も予選で負った左太もも痛で3種目。だが、萱和磨が大黒柱として予選、決勝で全6種目で大きな失敗なく通し「出来は言うことないくらい良かった」と存在感を示し、床運動以外では橋本も世界と渡り合った。

3強の得点の内訳では、技の難度を示すDスコア(演技価値点)では108点台のほぼ横並びで、出来栄えを示すEスコア(実施点)で差はついた。ただ、DもEも点差があった昨年に比べ、状況は悪くはない。難しさを上げれば自然に落ちる出来栄えも同時に押し上げられた。

この1年、必ず代表合宿で実施したのは、中学生でもできることだった。足先まで伸ばす、着地では腰を折らないなどの基本中の基本を確認するため、あん馬の旋回30周や、平行棒のスイング倒立など。中学の練習メニューをあえて徹底。世界の採点傾向の流れを鑑み、丁寧さを何よりも意識付けしてきた。2月にはライバル国との差を冷静に認め、あえて中国での合同合宿を実施。選手に間近ですごみを体験させ、意識を高めさせた。水鳥監督が7月に新潟市で開かれたロシアの合宿に足を運び、向上のヒントを探す姿もあった。

内村、白井の2枚看板が不在でも後退はしなかった。上位2カ国、特にロシアの進化は脅威だが、強化の方向性は間違ってないことは証明できた。「この5人が感じた悔しさは来年にぶつけて、絶対、ロシアと中国に大差をつけて勝ちたい」。最年少の橋本の宣言は、若者の強がりかもれない。ただ、この強気で終われた事実こそが日本の収穫でもあった。