花園の芝生は踏めなかった。常翔学園のWTB埜村(のむら)正章(3年)は松葉づえ姿でスタンドにいた。

大会直前の昨年12月。練習試合で右足腓骨(ひこつ)を骨折した。憧れの花園は1年で出番を得たが、2年はバックアップメンバーで試合に絡めず。最後の冬。11番を背負って活躍する…はずだった。手術が終わった病院のベッド。涙が止まらなかった。

「何も(先が)見えなかった。目の前が真っ暗でした」

暗闇で携帯電話が光った。代役としてWTBに入る生駒創大郎(3年)からだった。「代わりに俺がお前の分まで頑張るから」-。準々決勝の3日京都成章戦。ラストワンプレーで劇的な逆転トライを決めたのが、その生駒。親友である埜村のリストバンドを着けて全力で走り、4強の扉を開いた。

「本当に震えた。『自分がウイングに入っていたらどうだったかな?』って、思いました」。春には強豪の帝京大に進学する。大学で輝くチャンスはまだ、残されている。【真柴健】