自転車BMXフリースタイル・パークの世界王者、中村輪夢(17)の専用パークが22日、京都府宇治市にオープンした。所属契約するウイングアーク1stが約4億円を投じて国内初の本格的施設「WingPark1st」を建設。中村は動作解析用の9台のカメラなどを装備した世界初のハイテク練習場でトリックを磨き、東京大会でオリンピック初代金メダリストの座を目指す。

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中村の京都の自宅から車で1時間弱、山道を進むと突然目の前に巨大な白い建造物が現れる。縦43メートル、横29メートル、高さ12・7メートルの「Wingpark1st」はテニスコート6面が入る大きさ。この日のオープン発表会で1分間のランを披露した中村は「海外に行かずに、練習できる。最高のパーク」と笑顔をみせた。

「輪夢の、輪夢による、輪夢のための」パークだ。セクションは、中村自身が世界のトップパークと同じものを選んだ。9台のカメラと15台のセンサーが中村の動きをデータ化。「数字だと分かりやすい。武器のジャンプをさらに高くするため、ライン取りやスピードを考えたい」と話した。

パークは中村専用。ウイングアーク1stの田中潤社長は「365日24時間、いつでも使えます」と話した。東京・六本木の同社が京都に施設を造ったのは中村のため。これまで他県の施設に数時間かけて通っていたが「6時間の練習が8、9時間できる。じっくりと1人で新しい技に挑戦できる」と喜んだ。

ウイングアーク1stが中村と所属契約を結んだのは18年6月。企業向けのソフトウエア開発と販売をする同社だけに、当初からデータを活用した専用パークを用意する構想があったという。「新しいスポーツをデータの力でサポートしたかった。時間はかかったけど、間に合ってよかった」と田中社長は東京五輪を意識して話した。中村も「感謝しかない。毎日ここで練習して、東京五輪では1番になりたい」と金メダルを目指す。

◆BMXフリースタイル・パーク 08年北京大会から実施されているスピードを争うBMXレーシングと異なり、技を競うフリースタイルの1種目。高難度のトリックを組み合わせた1分間のランを2回行い、ジャッジによる採点で上位を採用する。東京五輪は男女各9人が出場。日本代表は5月に正式決定するが、男子は中村輪夢、女子は大池水杜の出場が確実視されている。東京五輪は有明アーバンスポーツパークで、8月1日に決勝の滑走順を決めるシーディングを行い、2日に決勝が行われる。

◆中村輪夢(なかむら・りむ)2002年(平14)2月9日、京都府生まれ。名前の輪夢はBMXショップを経営する父辰司さんが自転車のリムから付けた。3歳からBMXを始め、5歳で大会初出場。17年からシニアに転向し、第1回世界選手権7位。昨年は4月のW杯広島大会で日本人初の準優勝をすると、Xゲームは初出場で2位。11月のW杯最終戦で初優勝し、初の年間王者に就いた。

○…ウイングアーク1stは中村のメンタルもサポートしている。専属のメンタルコーチをつけ、専用のアプリで目標設定と到達度合いを管理。ストリートスポーツらしい「がむしゃらにやるだけ」から一歩進み、より具体的な目標を持たせたことが昨年の飛躍につながった。1年半前は「五輪に出ること」が目標だった中村が「金メダル候補」に成長。田中社長は「性格的にも前向きで、素晴らしい選手。ずっとバックアップします」と話していた。