18大会ぶりの優勝を目指す常翔学園(大阪)が快勝し、8強入りを決めた。

全国高校大会(大阪・花園ラグビー場)準決勝で、御所実(奈良)に敗れてから41日。野上友一監督は「大物感あるわな。あいつの涙なんか、見たことないぞ」と笑った。この日は前半30分間で57得点。その多くを演出したSO仲間航太(1年)は、胸を張った。

「やってもうたもんは、しょうがないんで。『やらないと』と思っています」

1月5日、仲間は痛恨のミスを犯した。御所実戦の前半22分。自陣からのキックを焦り、ゴール前で味方のパスを落球。ボールを拾った相手に3本目のトライを許し、結果的に7-26で敗れた。1年生SOは泣かなかった。だが、決して敗戦を軽く受け止めているわけではない。

「全国大会を経験して『この体じゃ通用しないな』と思いました」

わずか1カ月半ほどだが、体つきが変わった。体重は一時5キロ増やして80キロ。「さすがに重すぎたので…」と1キロ減らして、79キロになった。食事は1日6食。ウエートトレーニングにもこだわり始めた。

そんな男に吉報は届いた。

7人制の「ユースアカデミー」へ選出された。世界と戦える可能性を秘めたタレントを発掘する日本協会の事業だ。17日から3日間、東京で合宿が行われる。7人制の経験は自校でしかないが、仲間の目は輝いた。

「7人制はスペースが広いので、フィールドをよく見て、コントロールする力がつくと思う。あとはランの能力。うれしいです。代表で経験して、チームに(経験を)持って帰ってきたい」

野上監督は7人制日本代表として東京五輪を目指す、同校OBの石田吉平(明大1年)と重ね合わせた。

「セブンズ(7人制)に行って、吉平みたいにね。いろいろ吸収してほしい」

合宿前の16日には、大切な準々決勝を控える。相手は強豪の京都成章。この一戦に勝利すれば、5校が出場する全国選抜大会の切符が手に入る。仲間は誓った。

「今日はFWを(相手に)当てて、外を使うラグビーができた。明日もコンディション(天候)が悪いかもしれないけれど、しっかりと全国に向かって進みたい」

165センチ、79キロ。小さな司令塔の挑戦は続く。【松本航】

◆仲間航太(なかま・こうた)2003年(平15)9月26日、大阪市生まれ。小1から大阪中央ラグビースクール(RS)で競技を始め、小5から大阪RS。茨田北中でもラグビー部。ポジションはSOなどハーフバック、BK。50メートル走は6秒5。憧れの選手はダン・カーター(神戸製鋼)。