バスケットボールB1の秋田ノーザンハピネッツが、捲土(けんど)重来を期する。今季は10月3日のアウェー信州戦で開幕。昨季東地区5位からの地区優勝、リーグ王者へチャンピオンシップ(CS)制覇に挑む。チーム5季目で最古参の中山拓哉新主将(26)が、日刊スポーツのインタビューに応じ、今季への思いや主将就任秘話を語った。【取材・構成=山田愛斗】

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中山が「下克上魂」で先頭に立つ。小中高と主将を務めてきたが、プロ初の大役に自然体で臨む。「自分がたとえ5分しか出られなくても、今季は『チームが勝つ』というのをより意識したい。チームのために頑張ってやれば自然と数字がついてくるし、そこ(数字)に固執せず、チームをうまく回すことを第一に考えたい」。激しいディフェンスを40分間貫く秋田の「心臓」を担う。

特別指定選手時代含め5季目になる。Bリーグ開幕年で在籍初年度の16-17年は降格、17-18年は昇格。前田顕蔵ヘッドコーチ(HC、38=当時アシスタントコーチ)とともに、「絶望」と「歓喜」を知る唯一のメンバーだ。秋田には元日本代表の古川孝敏(32)や昨季オールスター出場の細谷将司(30)ら頼れるベテランが在籍するが、クラブ史を肌で感じてきた男として主将を託された。

中山は「顕蔵さん(前田HC)が『降格と昇格は大きな出来事で、そういう経験をしてきた選手と一緒にはい上がりたい。下を見たからこそ上に上がっていくのは楽しい』と言ってくれた。この経験をしているのは僕しかいないし、それをチームに還元したい」とプレーで示していく。

コロナ禍の昨季は41試合で打ち切られ、19勝22敗、勝率4割6分3厘の東地区5位だった。通常は60試合制だが、19試合残す中でB1在籍3季目にして最多勝かつ最高勝率をマーク。「自分たちのバスケをしている時間帯はどこにでも勝てるような手応えはあった」。負けパターンの先行される展開でも、粘って逆転したり地力はついてきた。

課題は明白で、同一チームとの2連戦が17カードあったが「2タテ」は2カードのみ。「強いチームになるには2連勝はマスト」。18-19年に屈辱の18戦全敗の同地区3強、A東京、宇都宮、千葉に対し、昨季は8戦未消化ながら3勝7敗(A東京に2勝、宇都宮に1勝)と1歩前進した。しかし、今季は中地区が東西2地区に統合され、各4チーム増の10チーム制。天皇杯王者で東地区2季連続4位の渋谷、中地区1位の川崎との対決も激戦必至で「戦国時代」の様相だ。

不完全燃焼だった。昨年12月の右手親指骨折でプロ入り後最多の9戦欠場し、32試合出場にとどまった。それでも代名詞のスチール数はリーグ2位の67で、1位と6差に肉薄。「僕の得意なことと言えばスチール。数字は気にしないが、スチール王は狙いたい」。B1、B2で獲得した同タイトルを三たびつかむ。

得点により貪欲になる。成功率29・4%の3点シュートと同59・6%のフリースローの精度向上に注力し「3ポイントは昨季後半に確率良く決められたので、それを1シーズン通してやりたい。あとはフリースローがあまり入らなかった。イージーに点を取れるところはしっかり決めたい」と確実性にこだわる。

コロナの影響でオフの過ごし方も変わった。「毎年、バスケットから離れて、いったんリセットするが、今年は地元(神奈川・横浜)に戻れないし、今までのオフで一番練習したり、バスケのことを考えていたと思う」。秋田の体育館で黙々と汗を流す日々だった。

開幕が目前に迫り「昨季はCSに出るのが目標だったが、東地区はメンタリティーが高いチームが多く、そこと戦うには優勝を目指さないといけない」。コロナで外国籍選手来日が遅れ、今後さらなる想定外も起こり得る。「気持ちの波を作らないように僕がチームをまとめ、今季優勝の目標がぶれないように声掛けして、いつもテレビで見てる舞台(CS決勝)に立ちたい」と力を込める。「ミスターハピネッツ」が1ランク上のステージへ導く。

○…点取り屋が抜けた穴を、どう埋めるかが躍進へのポイントになる。昨季のB1で19位(281選手のうち)の548得点をマークし、1試合平均21・1得点だったジャスティン・キーナン(31=現B2群馬)が退団。もう1つの得点源で203センチのウィリアムス・ニカ(33=現B1島根)もチームを離れた。206センチのアレックス・デイビス(28)が新加入も、コロナの影響でいまだに来日できていない状況だ。

前田HCは「攻撃の軸を日本人にしたいと思っている。ジャスティンとニカがオフェンスですごくカギになっていた。彼らがいない分、より組織的にプレーし、ボールを持った選手、持たない選手それぞれが点を取る、取らせる意識をより持たないと今年は点が入らず、強いチームにならない」と強調する。

◆中山拓哉(なかやま・たくや)1994年(平6)7月24日生まれ、横浜市出身。上飯田小-上飯田中-東海大相模-東海大。小学1年時にバスケットボールを始めた。同大4年時の17年2月に特別指定選手で入団。趣味は映画鑑賞や読書。182センチ、85キロ。家族は両親と兄、妹。