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今日の1枚

日刊スポーツが蓄積してきた写真の中から厳選して紹介します。

2020年12月25日
2020年12月25日

20年12月25日、全日本フィギュアスケート選手権・第1日、練習を終えて引き揚げる羽生結弦(代表撮影)。


今日の出来事

全日本選手権男子シングルで史上初の中学生王者が誕生した。初出場の本田武史(14=泉FSA)が、39年ぶりに最年少優勝記録を塗り替えた。(1996年)

162センチ、50キロ。体力測定でも特別の数字が出るわけではない。しかし、フィギュア好きのどこにでもいる中学生の本田には、ただ1つ恐怖心というものがなかった。8歳からほぼ毎日フィギュア浸りの日々を送り、半年でトリプルアクセルをマスター、そしてこの日、史上初の快挙を達成した。

そんな本田の第一声は反省だった。2度目のトリプルアクセルを試みた時、一瞬バランスを崩した。「やってしまいました」と優勝を喜ぶ前に悔しがった。ショートプログラムのトップ通過で、さすがに緊張は隠せなかった。演技前の練習ではジャンプの着地で左足に痛みも走った。

しかし、大物ぶりを発揮するのはここからだった。「滑って、観客の応援を聞いていると楽しくなって、左足の痛みも全然気にならなくなりました」。6種類ある3回転ジャンプは、すべてまとめてみせた。母陽子さん(43)の手作りの騎兵隊をイメージした黒の衣装が氷上に映える。技術的価値の要素点は、9人の審判全員が(6点満点で)5・7点以上を与える高得点をマークした。これで初の世界選手権出場も獲得した。「世界に出て、“これが本田だ”という滑りをして名前を売りたい」と自分の限界を知らない少年は不安を知らないように話した。

日本人初の4回転ジャンプ完成も間近に迫っている。周囲の期待は2年後の長野五輪へと高まるばかり。39年前最年少優勝記録を打ち立てた佐藤有香の父信夫さん(54)は「滑りがとてもスムーズ。まだ育ち盛りだし、先は長い。体を大切に焦らずやってほしい」と長野のホープに期待すれば、この日復活した伊藤みどりも「若いし、パワーもある。長野の目玉は本田君ですよ」とエールを送った。周りの騒ぎをよそに、本人は「今は出場することを目標にしています」と、長野五輪に対して現実感がわいていない。が、その目標がメダルとなる日は、そう遠くなく必然と訪れるはずだ。

◆全日本選手権最年少優勝 男子は、1957年(昭32)第25回大会で、関大一高1年だった佐藤信夫さんが15歳で優勝したのが最年少だった。女子では、35年第6回大会で優勝した稲田悦子の11歳。56年第24回大会の上野純子、72年第41回大会の渡部絵美の13歳、85年第53回大会の伊藤みどりが15歳で続いている。